成人の癌性疼痛に対する経皮的神経電気刺激(TENS)

癌性疼痛は、複雑で多次元的であるが、ほとんどは薬物療法を用いて管理される。薬以外のアプローチの必要性に関する認識が高まっており、TENSは重要な役割を担う可能性がある。本レビューの更新に対し、計3件の試験を組み入れたが、適格基準を満たしたのは新たな試験わずか1件であった。TENSは、1件の試験では15名、別な試験では41名、最近組み入れられた試験では24名の参加者に実施された。新たに組み入れられた試験では、TENSによって運動による癌性骨痛が改善する可能性が示されたが、パイロット・スタディのため、疼痛に対するTENSの影響を評価する目的でデザインされていなかった。過去のレビューにおける2件の試験では、TENSによる癌性疼痛の有意な改善は示されなかった。1件の試験では、TENSに有効性があるかどうかを評価するための参加者が十分ではなかった。3件すべての試験でTENSの忍容性は良好であった。これらの試験では、参加者、治療、方法および用いた症状測定ツールにおいて、有意差が認められた。2件の試験において、有効なTENSを受けた場合とプラセボを受けた場合の患者の一部を同定することができた。結果的に、癌性疼痛を有する成人にTENSを用いるべきかどうか判断するためのエビデンスは不十分であった。この領域における知識を向上させるため、適切に設計された臨床試験を用いたさらなる研究が必要である。

著者の結論: 

RCTを1件追加したにもかかわらず、適切なRCTの不足のため、本更新版システマティックレビューの結果は結論に達していない。成人の癌性疼痛管理におけるTENSの価値を評価するためには、大規模多施設RCTが必要である。

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背景: 

癌性疼痛は、複雑で多次元的であるが、癌性疼痛管理の柱として、主に生物医学的アプローチが用いられてきた。非薬理学的で革新的なアプローチが必要である。経皮的神経電気刺激(TENS)は、疼痛管理の役割を担う可能性があるが、TENSの有効性については現在のところ分かっていない。本レビューは、2008年第3号で発表されたオリジナル・レビューの更新版である。

目的: 

本システマティックレビューの目的は、成人の癌性疼痛に対するTENSの有効性を評価することであった。

検索戦略: 

最初のレビューでは、2008年4月に、コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、PsychINFO、AMEDおよびPEDROデータベースを検索した。2011年11月に、CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、CINAHLおよびPEDROデータベースの最新の検索を行った。

選択基準: 

成人の癌性疼痛管理に対するTENSの使用を検討したランダム化比較試験(RCT)だけを組み入れた。

データ収集と分析: 

本検索方法により、組み入れ可能な試験をさらに2件同定した。レビュー著者のうちの1名が、試験適格性ツールを用いて各アブストラクトを選別した。適格性を評価できなかった場合は、2人目の著者が論文の全文を評価した。1名の著者が、試験の情報を収集するために標準化データ抽出シートを用い、確証された5段階のOxford Quality Scaleを用いてそれぞれ試験の質を評価した。組み入れた3件の試験(オリジナル・レビューから2件、3件目は本更新版から組み入れた)の患者集団における症例数が少なく、差がわずかであったため、メタアナリシスができなかった。オリジナル・レビューでは、検索方法によって利用可能な発表済みの試験37件を同定し、これらを試験の選択を決定する2組のレビュー著者で分担した。4名のレビュー著者全員が最終スコアについて議論し、同意した。

主な結果: 

本更新版レビューでは、適格基準(参加者24名)を満たしたのは、追加のRCTわずか1件であった。これは実現可能性試験であり、介入効果を検討するためにデザインされたものではなかったが、TENSは、がん患者集団の運動による骨痛を改善する可能性があることを示した。最初のレビューで2件のRCT(参加者64名)が同定されたため、本レビューには現在計3件のRCT(参加者88名)が組み入れられている。これらの試験は、試験対象集団、症例数、試験デザイン、方法論的な質、TENSの方法、治療期間、実施方法および用いたアウトカム尺度に関して異質性が認められた。1件のRCTでは、乳癌治療に続発する慢性疼痛を有する女性において、TENSとプラセボとの間に有意差はなかった。別のRCTでは、緩和ケアを受けている患者において、鍼治療型TENSの実治療と偽治療との間に有意差はなかった。本試験は検出力が不足していた。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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