妊娠37週以降において破水した場合、直ちに分娩することと自然陣痛を待つことのどちらが児にとってより良いか

論点

妊娠37週以降における、子宮収縮開始以前の破水(前期破水、prelabour rupture of membranes, PROM)には二つの選択肢がある。一つはなるべく早く分娩になるよう陣痛を誘発すること(早期計画分娩)、もう一つは自然に陣痛が発来するのを待つこと(待機的管理)である。

重要である理由

以前の版では、早期計画分娩は待機的管理に比べて、帝王切開のリスクを高めることなく母体の感染を減少させるかもしれないことがわかった。早期計画分娩では、新生児の感染症発症率は変わらないが、新生児集中治療室(NICU)に入院する児は減少した。早期の分娩誘発には利点があるが、その全体像を待機的管理と比較することが重要である。

得られたエビデンス

このレビューは、妊娠37週以降の妊婦8615例を含む23のランダム化比較試験を対象とした。全体的にバイアスのリスクが低いのは3試験のみであり、このレビューのエビデンスは非常に低度から中程度である。早期計画分娩のための分娩誘発の手段として、10試験がオキシトシン点滴を、12試験がプロスタグランジンの使用を、1試験がコーロファイラム(ルイヨウボタンを用いたホメオパシーレメディー)を、1試験が鍼治療を行っていた。

早期計画分娩は待機的管理に比較して母体の感染リスク(児を取り巻く膜構造や羊水の感染(絨毛膜羊膜炎)を含む)を減少させる(6864例を含む8試験;質の低いエビデンス)。また、早期計画分娩は児の感染症または感染症疑いのリスクも減少させる(7314例を含む16試験;質の低いエビデンス)。一方で、帝王切開率(8576例を含む23試験、質の低いエビデンス)、母体の重篤な疾患または死亡(425例を含む3試験、非常に質の低いエビデンス)、児の明らかな感染症(1303例を含む6試験、非常に質の低いエビデンス)、児の死亡(6392例を含む8試験、中程度の質のエビデンス)については違いが見られなかった。早期計画分娩で出生した児はNICU入院率が低く(6179例を含む8試験)、また母体(748例を含む2試験)および児(5691例を含む4試験)のいずれも分娩後の入院期間が短かった。待機的管理を受けた妊婦に比較して、早期計画分娩となった妊婦の方が、より良い体験と感じていた(5134例を含む2試験)。

意味するもの

前期破水後の早期計画分娩(待機的管理に比較して)は、帝王切開の必要性を増加させることなく母体の感染症を減少させ、新生児の感染症も減少させる可能性がある。一方で、出生児に対する長期的影響についてのエビデンスが必要である。

訳注: 

《実施組織》内藤未帆、杉山伸子 翻訳[2018.9.5]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD005302》

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