会陰部損傷を低減するための妊娠中の会陰マッサージ

妊娠中の会陰マッサージは、分娩時の会陰部損傷およびその後の疼痛の軽減に有用である。

ほとんどの妊婦は、会陰裂傷、切開および縫合を経験しない出産を切望している。これらは後からしばしば疼痛や不快感を引き起こし、性機能に悪影響を及ぼす可能性がある。妊娠期間の最終月の間に実施する会陰マッサージは、分娩時に会陰組織を拡張しやすくすることが可能な方法として示唆されている。4件の試験(妊婦2497例)のレビューでは、妊婦またはパートナーが実施する会陰マッサージ(35週から1週間にわずか1~2回)によって会陰部損傷(主に会陰切開)の確率および会陰部痛の持続が減少したことが確認された。経膣出産の経験のない妊婦に対する影響は明白であったが、経験妊婦に対してはそれほど明らかではなかった。妊婦は、指で行う会陰マッサージの利益に関して情報を得る必要がある。

著者の結論: 

指で行う妊娠中の会陰マッサージは、会陰部損傷(主に会陰切開)の確率および持続的会陰痛の報告を減少させ、妊婦には総じて十分に受け入れられている。そのため、妊婦には会陰マッサージによって得られる可能性がある利益について認識させ、マッサージ方法に関する情報を提供する必要がある。

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背景: 

経膣出産後の会陰部損傷は、短期および長期の有意な罹病状態に関連することがある。会陰部損傷の発生率を低減させる方法の一つとして、妊娠中の会陰マッサージが提案されている。

目的: 

妊娠中の指で行う会陰マッサージが分娩時の会陰部損傷の発生率およびその後の罹病状態に及ぼす効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group’s Trials Register(2012年10月22日)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(「コクラン・ライブラリ」 2012年第10号)、PubMed(1966~2012年10月)、 EMBASE(1980~2012年10月)および関連論文の参考文献一覧を検索した。

選択基準: 

妊娠期間の最終4週間以上にわたって指で行う出産前会陰マッサージの報告された方法を評価するランダム化および準ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が独立して選択基準を適用し、選択した研究からデータを抽出し、研究の質を評価した。その後追加された情報については、研究著者に問い合わせた。

主な結果: 

指で行う妊娠中の会陰マッサージとコントロールを比較した4件の試験(妊婦2497例)を選択した。試験の質は、すべて良好であった。指で行う妊娠中の会陰マッサージは、縫合を必要とする外傷発生率の全般的低減に関連し[4件の試験、妊婦2480例、リスク比(RR)0.91、95%信頼区間(CI)0.86~ 0.96)、治療必要数(NNTB)15例(10~36例)]、会陰マッサージを実施した妊婦は会陰切開を受ける確率が低かった[4件の試験、妊婦2480例、RR 0.84( 95%CI 0.74~0.95)、NNTB 21例(12~75例)]。これらの結果は、経膣分娩の経験がない妊婦のみ有意であった。1度または2度の会陰裂傷、もしくは3度または4度の会陰部損傷の発生率に差は認められなかった。出産後3カ月の時点で、以前に経膣分娩を経験していた妊婦のみが疼痛発生率の統計学的に有意な低下を報告した[1件の試験、妊婦376例、RR 0.45( 95%CI 0.24~0.87)、 NNTB 13例(7 ~60例)]。機械分娩、性的満足感、または尿失禁、便失禁、ガス失禁の発生率について、会陰マッサージを実施した妊婦と実施しなかった妊婦の間に有意差は認められなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.31]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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