咽頭炎(咽頭痛)と中薬(中医学の薬草療法)

咽頭炎(咽頭痛)はあらゆる年齢層で流行している呼吸器病である。中国では、咽頭炎の治療に多数の中薬が使用されている。咽頭炎の治療に関する中医学(TCM)の臨床研究は、大部分が臨床研究報告の世界基準を満たしておらず、前回のレビューでは、いずれの処方も臨床使用に推奨できなかった。

本改定版レビューでは、参加者数1954名の計12試験(新規5件を含む)を対象とした。6種類の中薬は症状改善や回復率上昇につながる可能性がある。2件の試験で、下痢1例と軽度悪心1例がそれぞれ報告された。別の2件の試験では試験群での有害事象は認められなかった。他の試験では有害事象は報告されなかった。検討した結果、10試験は方法の質が低く、方法の質が中等度であったのは2試験のみだった。中薬は咽頭炎治療の選択肢となる可能性があるが、咽頭炎の治療に対して中薬の使用を最終的に支持または否定する強固なエビデンスを提供する優れたデザインの試験が存在しないため、特定の処方を別の処方よりも推奨することはできない。咽頭炎に対する中薬の研究の質を上げることが必須であり、質の高いランダム化比較試験(RCT)にもとづく、より強固なエビデンスが必要である。

著者の結論: 

本レビューで得られたエビデンスにもとづき、一部の中薬は咽頭炎の治療に有効であると考えられた。しかし、質の高い臨床試験が不足しているため、咽頭炎の治療に対する中薬の有効性には疑問の余地がある。したがって、咽頭炎に有効な治療として特定の中薬を推奨することはできない。

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背景: 

中国では中薬が咽頭炎の治療に用いられることが多い。また、世界中で中医によって使用されている。これまで、咽頭炎に対する中薬の有効性に関するシステマティック・レビューは行われていない。

目的: 

咽頭炎患者に対する中薬の有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

CENTRAL (<1>The Cochrane Library</1> 2011年4号)を検索した。これには、Cochrane Acute Respiratory Infections Group's Specialised Register、MEDLINE (1966年〜2011年11月第3週)、EMBASE (1980年〜2011年12月)、AMED (1985年〜2011年12月)、the Chinese Biomedical Database (CBM) (1975年〜2011年12月)およびChina National Knowledge Infrastructure (CNKI) (1994年〜2011年12月)が含まれる。

選択基準: 

咽頭炎の治療に対し、回復、無効性および有害事象をアウトカムとして中薬を評価したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。

データ収集と分析: 

3名のレビュー著者がデータの抽出および解析を行った。1名のレビュー著者が試験著者と連絡をとり、RCTかどうかを確認した。

主な結果: 

1954名が参加した12試験を対象とした。このうち10件は方法の質が低く、2件は方法の質が中等度であった。メタアナリシスを実施せず、個別に結果を報告した。6種類の中薬は、回復改善に対して対照群よりも優れていることが示された。Ertong Qingyan Jiere Koufuye(八童精咽解熱口服液)はFufang Shuanghua Koufuye(复方双花口服液)よりも急性咽頭炎に対する効果が高かった(オッズ比(OR)2.52; 95%信頼区間(CI)1.11〜5.74)。Yanhouling(咽喉灵)合剤はゲンタマイシン噴霧剤の吸入と比較して急性咽頭炎に対する効果が高かった(OR 5.39; 95% CI 2.69〜10.81)。Qinganlan Liyan Hanpian(清涼利咽含片)はFufang Caoshanhu Hanpian(复方草珊瑚含片)と比較して急性咽頭炎に対する効果が高かった(OR 2.25; 95% CI 1.08〜4.67)。咽頭炎用カプセルは抗菌薬(セファレキシン静注)と比較して急性咽頭炎および急性扁桃炎に対する効果が高かった(OR 2.36; 95% CI 1.01〜5.51)。タンポポが主剤の煎剤(compound dandelion soup)はペニシリンナトリウムと比較して急性化膿性扁桃炎に対する効果が高かった(OR 5.06; 95% CI 1.70〜15.05)。また、Dikuiluqan Hanpian(地喹氯铵含片)と併用して、陰を養い熱を除くことで咽頭痛を軽減する方法を用いた場合、Dikuiluqan Hanpian単独よりも小児の慢性咽頭炎に対する効果が高かった(OR 2.63; 95% CI 1.02〜6.79)。他の6種類の中薬は対照と同程度の効果が得られた。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.22]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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