関節リウマチの治療を目的とした太極拳

太極拳は関節リウマチ患者にとって有用となるか?この問いに答えるため、科学者が4件の研究について評価した。それらの研究では、リウマチ性関節炎の患者202例をテストした。クラスに参加し、8~10週間太極拳の指導を受け練習した患者もいた。その他の患者は太極拳のクラスに参加しなかった。これらの研究の品質が高くないが、このコクラン・レビューでは、現在得られている太極拳に関するベストエビデンスを得ている。

太極拳とは何か、関節リウマチ患者にとってどう役立つのか?リウマチ性関節炎(RA)は、免疫システムが自分の体の器官を攻撃する疾患である。この病状はほとんどが足や手の関節で発現し、発赤、疼痛、腫脹および関節部分の熱を生じる。太極拳はまた、「Tai Chi Chuan」(太極拳の別称)とも呼ばれ、深呼吸とリラクゼーションとを組み合わせ、緩やかで静かな動きを行う運動である。高齢者において、太極拳はストレスの軽減、下半身の筋力増強、バランス感覚、体位および運動能力の改善が認められている。関節リウマチ患者で太極拳が同じ有用性をもたらすのかは不明である。

太極拳は効果があるのか?2件の研究試験を行った結果、太極拳を行っているか否かにかかわらず、患者の日常生活、関節の圧痛、患者で認められた腫脹関節数および握力はほぼ同じであったことが示された。

1件の研究試験を行った結果、太極拳を練習している場合では、太極拳を練習していない場合よりも足関節、臀部および膝の可動範囲の改善度が高かったことが示された。10週間にわたり太極拳を練習した後の4カ月後、太極拳を練習した患者はプログラムを楽しみ、また太極拳を練習しなかった患者よりも改善したと感じた。

しかしこの研究では、疼痛、生活の質の改善については検討していない。

副作用はないのか?2件の研究では、太極拳を練習した患者のおよそ3分の1で最初の3週間に膝、肩、腰の疼痛の訴えがあったが、疼痛が減少し太極拳を継続した(1名を除く)。太極拳の練習をしていない時に研究を中止した患者数が多かった。

最終的な結論。太極拳により関節リウマチ患者で足関節、臀部および膝の可動範囲の改善が認められたという「シルバー」レベルのエビデンスがある。太極拳により、患者の日常生活、関節の圧痛、握力、腫脹関節数の改善は認められず、また関節リウマチの症状は増大しなかった。しかし、太極拳の練習により改善したと感じ、また楽しむことができた。

リウマチ性関節炎の疼痛または生活の質を改善させるか現在も不明である。太極拳により有用性が認められる割合、程度、期間については不明である。Based on Han A, Robinson V, Judd M, Taixiang W, Wells G, Tugwell P.に基づく関節リウマチの治療を目的とした太極拳コクラン・ライブラリ、2004年第3号(近刊)

著者の結論: 

レビューの結果から、太極拳により関節リウマチの症状が悪化しないことが示唆された。更に、太極拳は、関節リウマチ患者にとって脚の可動範囲の低下、特に足関節の可動範囲に対する統計学的に有意な有用性が示されている。対象とした研究では、患者が報告した疼痛への効果については評価していない。

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背景: 

リウマチ性関節炎(RA)は慢性、全身性で炎症性の自己免疫疾患であり、その結果として筋骨格系の破壊に至る疾患である。疼痛の緩和、炎症の軽減、関節傷害の遅延または停止、身体的障害の予防、また患者の健康な生活の感覚および機能を温存または改良することが主な治療目的である。太極拳(Tai Chi)はTai Chi Chuan(太極拳の別称)と同義語として知られており、中国では数世紀にわたり関節痛療法に有効であるとして認識されてきた古代中国の健康増進武術である。

目的: 

太極拳について関節リウマチ患者の治療法としての有効性および安全性を評価する。

検索方法: 

Cochrane Controlled Trials Register(CCTR)、MEDLINE、PedroおよびCINAHLデータベースを2002年9月まで、ランダム化比較試験のコクランによる検索方法を用いて検索した。またChinese Biomedical Databaseは2003年12月まで、Beijing Chinese Academy of Traditional Medicineは2003年12月までを検索した。

選択基準: 

太極拳の指導を行う運動プログラムまたは太極拳の理念の原理を取り入れた運動プログラムの有益性および有害性を検討したランダム化比較試験および比較臨床試験を選択した。このレビューでは、無治療、偽治療またはその他の療法を受けた対照群を組み入れた。

データ収集と分析: 

2名のレビューアがそれぞれの研究について、このレビューの対象となるか決定、研究方法の品質を評価、標準化した形式を用いデータを抽出した。

主な結果: 

このレビューでは試験参加者が206名となる4件の試験を対象とした。太極拳にもとづく運動プログラムは、日常行動、圧痛および腫脹の見られる関節、患者による全体評価など、疾患活動性の転帰の殆どに、臨床的な重要性、統計学的に有意な効果が認められなかった。足関節底屈の可動範囲について、太極拳の参加者には統計学的に有意で臨床的に重要な改善が認められた。有害な影響は確認されていない。1件の研究では、従来の関節可動域(ROM)運動/休息プログラムと比較し、太極拳舞踏プログラム参加者では運動への参加率が有意に高く、また太極拳プログラム終了直後およびに4カ月後に運動による喜びを感じていたことが明らかとなった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.25]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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