成人における歯周組織の健康のための定期的なスケーリングとポリッシング

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レビュークエスチオン

歯面へのスケーリングとポリッシングは、付着物(プラークや歯石)だけでなく、歯肉の炎症(歯肉炎)や出血を減少させる。初期の歯周病である歯肉炎が改善することで、重篤な歯周病である歯周炎の進行を抑えることに繋がります。

本レビューでは、定期的なスケーリングとポリッシングの影響に関するエビデンスを評価しました。すなわち、Cochrane Oral Health Groupの有志によって、健康な成人に対する定期的なスケーリングとポリッシングの効果、具体的には、スケーリングとポリッシングの間隔の違いによる影響、口腔清掃指導の有無による影響、歯科医師もしくは歯科医療従事者(歯科療法士、歯科衛生士)による影響について検証しました。

背景

多くの歯科医師や歯科衛生士は、歯周病が進行するリスクがたとえ、低くても、多くの患者さんに、定期的なスケーリングとポリッシングを行っています。そこで、本レビューでは、定期的なスケーリングとポリッシングの効果やより効率的な治療間隔について検証しています。

本レビューでは、プラークという細菌の付着物や歯石という硬い付着物を除去するために、歯冠部と歯根部の定期的なスケーリングとポリッシングの効果についてまとめています。歯石は、プラークも含んでいて、硬くて、歯ブラシだけでは取れません。歯石は、他の付着物や着色物と一緒に、スケーリングとポリッシング治療により除去されます。すなわち、スケーリングとは、特別にデザインされた器具(スケーラー)や超音波スケーラーを用いて,歯面から付着物を除去することで、ポリッシングとは、専用のペーストを用いて、機械的に行います。

本レビューでは、スケーリングは、歯肉辺縁の上下の付着物を除去することです。しかし、歯肉の外科手術(歯周外科手術)、歯周ポケット内の薬物による洗浄やルートプレーニングという歯根面の平坦化は除外しています。

研究の特徴

本レビューのエビデンスは、2013年7月15日に更新されたものです。

  本レビューでは、836名(61名〜470名)を含めた3研究を評価しています。2研究の対象が18歳〜73歳の成人で、残りの1研究の対象が若年者です。

1研究の対象は、3歯科医院での定期健診の患者(被験者)で、歯石やプロービング時の歯肉出血があり、歯と歯肉との隙間(歯周ポケット)が3.5mm以下の患者だけです。また、別の1研究の対象は、アメリカ空軍の若い男性士官学校生と歯科大学の予防歯科クリニックの患者(被験者)です。しかし、対象者は、歯肉炎で、その重症度にはばらつきがありましたが、歯槽骨の吸収を伴うような歯周炎のものは含まれていません。

主な結果

本レビューの主な結果は、最適な研究デザインを行った開業歯科医院での1研究から導きだされたものです。しかし、この研究は、定期的なスケーリングとポリッシングを行わない群に比べて、6か月間隔、もしくは12か月間隔の定期的なスケーリングとポリッシングを行うことの効果や弊害について示唆していません。一方、異なる間隔での定期的なスケーリングとポリッシングの効果を比較したアメリカ空軍の若い男性士官学校生を対象とした研究では、12か月間隔に比べて、3か月間隔の方が、歯肉炎、プラーク、歯石所見で、よりよい効果が示唆されています。すなわち、本研究治療内容には、定期的なスケーリング、ポリッシングと口腔清掃指導が含まれ、その結果、歯肉炎、プラーク、歯石所見が改善されています。しかし、歯科医師と他の歯科医療従事者(歯科療法士、歯科衛生士)によるスケーリングとポリッシングの効果に関する比較研究はありません。

スケーリングは侵襲的な治療法であり、歯根面のダメージや知覚過敏を含めた弊害も伴います。このような情報は、選択した研究で報告されています。

しかし、生活の質や経済的なアウトカムのような患者を中心としたアウトカムに関する報告は含まれていません。

エビデンスの質

多くの国の成人に対するこのような定期的なスケーリングとポリッシングを行う治療法に関して評価しましたが、日常臨床に有益な質の高い信頼のおけるエビデンスが少ないことは、残念です。エビデンスの質は、適切な研究を選んでも、総じて低いという結果になりました。

著者の結論: 

研究のエビデンスから、定期的なスケーリングとポリッシングの歯周組織の健康への影響を評価するには、不十分であった。本レビューの疑問に答えるには、5年以上の長期間、歯科医院において質の高いより優れたデザインの臨床研究が必要である。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

多くの歯科医師と歯科衛生士は、歯周病進行のリスクが低いと考えられる患者に対しても、定期的な間隔でのスケーリングとポリッシングを提供している。健康な患者に対する「定期的なスケーリングとポリッシング」の臨床的効果費用対効果、そしてその‘最適な’来院頻度については議論がある。

「定期的なスケーリングとポリッシング」を行う治療法は、局所の刺激因子(プラーク、歯石、デブリス、着色)を除去し、歯周外科治療、化学療法や歯肉縁下のルートプレーニングのような付随的な歯周治療を行わなくていいように、歯冠部や根面をスケーリングし研磨することと定義される。

目的: 

目的は、1)歯周組織の健康に対する定期的なスケーリングとポリッシングによる有益な効果有害事象の確認を行うこと、2)歯周組織の健康に対する異なる間隔でのスケーリングとポリッシングの有益な効果有害事象の確認を行うこと、3)歯周組織の健康に対する口腔清掃指導(OHI)の有無による定期的なスケーリングとポリッシングの効果について比較すること、4)歯周組織の健康に対する歯科医師もしくは歯科医療従事者(歯科療法士、歯科衛生士)による定期的なスケーリングとポリッシングの効果を比較することである。

検索方法: 

本レビューでは、Cochrane Oral Health Group's Trials Register (to 15 July 2013)、CENTRAL (The Cochrane Library 2013, Issue 6)、MEDLINE via OVID (1946 to 15 July 2013)、EMBASE via OVID (1980 to 15 July 2013)、さらに、2013年7月までのmetaRegister of Controlled Trials、the US National Institutes of Health Clinical Trials Register(clinicaltrials.gov)を検索した。なお、言語や日時は制限しなかった。

選択基準: 

論文は次の基準に従って選んだ。すなわち、重度な歯周炎でない健康な有歯顎者に対して、OHIの有無による定期的なスケーリングとポリッシングのランダム化比較試験である。ただし、スプリットマウスデザインによる研究は除外した。

データ収集と分析: 

2人のレビュアーが、別々に、選択基準に従って、研究結果を判定し、データを抽出した。さらに、バイアスリスクを評価した。異なる指標が用いられた場合は、標準化平均差(SMDs)と平均差(MDs)の両方、連続変数の場合は、95%信頼区間(Cls)を計算した。また、4論文以下のメタ解析の場合は、固定効果モデルを用いた。不足したデータの確認のために、レビュアーは可能で、必要と思われる場合に、研究者とコンタクトをとった。

主な結果: 

3つの研究(836名の被験者)を本レビューに含めた。しかし、3つの研究とも、バイアスは不明瞭であった。そして、プライマリーアウトカムとしては歯肉炎に対する計算結果が、示されているにすぎない。一方、アウトカムとしてアタッチメントレベルの変化や歯の喪失を含めた研究はなかった。また、スケーリングとポリッシングの弊害に関する報告もなかった。

目的1:スケーリングとポリッシングとスケーリングなし/ポリッシングなしの比較
スケーリングとポリッシング群とスケーリングなし/ポリッシングなし群を比較した研究は、1研究だけであった。この研究は、開業歯科医院で行われ、6か月毎と12か月毎にスケーリングとポリッシングを行った群と治療を行わなかった群との比較である。その結果、アウトカムとして歯肉炎、歯石、プラークを指標として、定期的なスケーリングとポリッシングの有効性を否定する根拠にはならないことが判明した。すなわち、無治療群代表歯の歯肉出血率は、40%に対して、6か月毎のスケーリングとポリッシングや24か月後の代表歯の歯肉出血率に対するMDは、-2%(95% Cl -10%-6%、p = 0.65)、12か月毎のスケーリングとポリッシングに対するMDは、-1%(95% Cl -9%-7%、p = 0.82)であった。ボディオブエビデンスはlowと評価された。

目的2:スケーリングとポリッシングの間隔の違いにおける比較 ではバイアスリスクはアンクリアーであるが、スケーリングとポリッシングの間隔の違いを見た2研究があった。すなわち、6か月間隔と12か月間隔のスケーリングとポリッシングの効果を比較したところ、24か月後の歯肉炎に対するSMDは、小さく-0.08(95% Cl -0.27-0.10)となり、両者の異を示すには、不十分な結果となった。スケーリングとポリッシングの間隔を詰めると、その効果を示唆する有意な結果がいくつか得られた。2つのうちの1研究では、特に、3か月間隔と12か月間隔のスケーリングとポリッシングの24か月後の歯肉炎をアウトカムとした場合、OHIを行うと、MD-0.14(95% Cl -0.23-0.05、p = 0.003)、OHIを行わないと、MD-0.21(95% Cl -0.30-0.12、p < 0.001)(患者毎に0〜3のスケールとした)となった。さらに、歯石の減少においても有意な異が見られた。しかし、ボディオブエビデンスはlowと評価された。

目的3:OHIの有無によるスケーリングとポリッシングの効果の比較
1つの研究が、OHIの有無によるスケーリングとポリッシング治療効果を比較している。すなわち、OHI を行うと、12か月後に歯肉炎が改善し、24か月後のMDは、-0.14(95% Cl -0.22― -0.06)となった。また、OHI を行うと、3か月、12か月共に、有意にプラークは減少した。しかし、ボディオブエビデンスはlowと評価された。 

目的4:歯科医師もしくは歯科医療従事者(歯科療法士、歯科衛生士)によるスケーリングとポリッシングの効果の比較
歯周組織の健康に対する歯科医師もしくは歯科医療従事者による定期的なスケーリングとポリッシングの効果を比較した研究はなかった。

訳注: 

(翻訳 稲垣 幸司;JCOHR)CD004625_Pub4 2016.01.28登録 ご注意:この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、JCOHR事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。JCOHR事務局では最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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