腰痛に対する薬草療法

レビューの論点

非特異的腰痛症(low-back pain :LBP)における疼痛への薬草療法の効果について、エビデンスを検証した。

背景
腰痛は一般的なものであり、ある一ヶ月で人口の最大35%が経験する。非特異的LBPは、肋骨最下部から下臀部までの部位の痛みと定義され、これは関節リウマチ、感染症、骨折、がん、あるいは椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛や他の神経圧迫といった重篤な基礎疾患により生じるものではない。腰痛を含めた多くの症状の治療に、経口摂取または皮膚塗布用の薬草療法が用いられている。

試験の特性
コクランの研究者は、入手可能な2013年8月5日までのエビデンスを検証した。 急性または慢性の非特異的LBPの成人2050例が組み入れられた14件の試験において、6種類の薬草療法が検討されていた。2種の経口薬草療法 ハルバゴフィツム プロカンベンス (デビルズクロー)および サリックスアルバ(ホワイトウィローバーク)}がプラセボ(偽物のあるいは偽造品の錠剤)またはロフェコキシブ(バイオックス®)と比較されていた。3つの局所クリーム、軟膏またはゲルカプシカム フルテッセンス (カイエンヌ)、シムフィツムオフィキナーレ L.(コンフリー)、およびソリダゴ チレンシス (ブラジリアンアルニカ)が、プラセボクリームあるいは軟膏およびホメオパシーゲルと比較されていた。エッセンシャルオイル1種(ラベンダー)は無治療群と比較されていた。試験に組み入れられた人々の平均年齢は52歳で、試験は通常3週間継続された。

主要な結果
1日標準量50 mgのデビルズクローまたは100 mgのハルパゴシドは、プラセボ以上に疼痛を軽減する可能性がある。1日標準量60 mgは、バイオックス®の1日標準量12.5 mgとほぼ同程度に疼痛を軽減した。1日標準量120 mgのホワイトウィローバークおよびサリシン240 mgは、プラセボよりも疼痛を軽減し、1日標準量240 mgでは、バイオックス®(非ステロイド性抗炎症薬)の1日量12.5 mgとほぼ同程度に疼痛を軽減した。カイエンヌはいくつかの剤形でテストされていた。湿布薬はプラセボよりも疼痛を軽減し、ホメオパシーゲルのスピロフロー SLRとの比較においてはほぼ同程度に軽減した。2つの他の軟膏薬S. オフィキナーレS. チレンシスは、プラセボクリームよりも疼痛知覚を軽減すると思われた。ラベンダーエッセンシャルオイルを用いた指圧療法は、従来の治療と比較して疼痛の軽減および柔軟性の改善に効果があるようだった。有害作用は報告されたが、主には軽度で、一過性の消化器系症状の訴えや皮膚の刺激にとどまった。

エビデンスの質
組み入れた試験の多くは、バイアスリスクが低く、エビデンスの質は主に「非常に低い」から「中程度」の試験であった。「中程度」のエビデンスが確認されたのは、C. フルテッセンスのみであった。各試験は、(6週間までの)短期の使用効果を検討したのみであった。組み入れた8試験の著者は潜在的な利害抵触があり、他の4例の著者は利害抵触を開示しなかった。バイオックス®は、有害事象のため市場から撤退しているが、3つの全ての物質は、相対的な効果と安全性について、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンなどの直ちに利用可能な鎮痛薬と比較すべきである。

結論
質が「低い」から「中程度」であるエビデンスから、4種の薬草療法が急性および慢性LBPの疼痛を短期的に軽減し、副作用もほとんどないであろうことが分かる。これらの物質が長期的な使用に安全であり、効果があるというエビデンスはまだ存在しない。これらの介入効果をさらに検討するためには、大規模かつデザインの優れた試験を実施する必要がある。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD004504.pub4】

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