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腹部の手術後に投与する抗血栓薬の注射を退院後も継続した場合、血栓の生成がさらに抑制されるのか

レビューの論点

腹部や骨盤の手術を受ける患者に対して抗血栓薬(注射)を退院後も継続投与することによって、入院中の通常の治療と比較して、下肢(脚)または肺に血栓(血管にできる血の塊)が発生する可能性が低下するのか。

重要である理由

合併症として発生する血栓は、その発生部位や重症度によって、症状がないものから致死性の可能性があるものまでさまざまである。術後の患者が退院できるほどに安全な状態であると判断されたあとも、術後数週間から数カ月にわたって血栓が発生するリスクが変わらないことがエビデンスによって示唆されている。一部のガイドラインでは、術後の患者が退院後も一定期間は自宅で引き続き抗血栓薬を注射することを推奨しているが、すべての医師がこれを推奨しているわけではない。

主な結果

計1,728人を対象に本レビューの論点を検討した試験7件が見つかった。退院後も抗血栓薬を継続して注射することによって、下肢や肺に血栓が発生するリスクが低下した。本レビューから、30日間の追跡調査では、退院後に抗血栓薬を注射しなかった場合の血栓の全発生率は13.2%であったが、退院後14日分以上注射を処方した場合には5.3%に低下したことが明らかとなった。術後の患者に対して期間を延長して抗血栓薬を注射したところ、症状の有無を問わず血栓の発生数が減少した。期間を延長して抗血栓薬の注射を行った患者には、抗血栓薬使用時によく懸念される出血性合併症および死亡の増加は認められなかった。

結果が意味すること

腹部・骨盤手術後の14日間以上にわたる抗血栓薬の注射の継続は、血栓発生リスクを低下させる。

訳注

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)菊池 明美 翻訳、ギボンズ 京子 更新、吉原 哲(兵庫医科大学血液内科)監訳 [2020.10.27] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD004318.pub5》

Citation
Felder S, Rasmussen MS, King R, Sklow B, Kwaan M, Madoff R, Jensen C. Prolonged thromboprophylaxis with low molecular weight heparin for abdominal or pelvic surgery. Cochrane Database of Systematic Reviews 2019, Issue 8. Art. No.: CD004318. DOI: 10.1002/14651858.CD004318.pub5.