多発性硬化症(MS)の補助治療としての食事介入

利用可能な従来の治療の有効性が部分的で、副作用を引き起こす可能性があるため、大半のMS患者が補完的な代替医療、すなわち通常は特定の食事および栄養補助食品による治療を受けています。実際、「食事」および「多発性硬化症」の用語を用いたインターネット検索では2,700万ものリンクが表示され、上記治療は広範に用いられ、MS患者集団はその効果を信じていることが示されました。最も一般的な食事介入は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、アレルゲン非含有(グルテンおよびミルク)の食事、ビタミンおよび微量栄養素、並びにセレニウム、イチョウの葉抽出物およびコエンザイムQ10などのアンチオキシダント補充です。 本レビューのレビューアらは、食事習慣の変更によりMS患者の予後に望ましい影響があるかどうかの評価を試みました。この分野では大量のデータが発表されていますが、患者総数794名を対象とするわずか6件のPUFAに関する比較試験が本レビューでの方法の品質の点で選択基準に合致しました。ビタミンおよび抗酸化補給剤に関する試験で、当該基準に合致するものは認められませんでした。科学データベースを広範囲に検索しましたが、その他のMSに対する食事介入案に関する論文は見出されませんでした。 利用可能なデータは、PUFA補給から得られる利益又は有害性の可能性を評価するには不十分でした。50%~75%のMS患者が食事レジメンおよび補給剤を使用している点から見ても、PUFAに関するエビデンスがなく、他の補給剤に関するデータが大幅に不足しているのは残念です。

著者の結論: 

PUFAはMSの主要臨床アウトカム(疾患進行)に対し大きな影響をもたらさないように思われたが、2年間にわたり再発頻度低下の傾向を認める可能性がある。しかし、質が不確定なためPUFA補充の真の利益又は有害性を評価するには入手可能なデータが不十分である。 MSに対するビタミン補充およびアンチオキシダント補給剤の利益およびリスクの可能性に関するエビデンスが不足している。MSに対する食事介入の有効性を評価するにはさらなる研究が必要である。

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背景: 

臨床および実験的なデータにより、一定の食事レジメン、特に多価不飽和脂肪酸(PUFA)およびビタミンを含む食事が多発性硬化症(MS)患者のアウトカムを改善する可能性が示唆されている。食事および栄養補助食品は疾患アウトカムを改善し従来の治療の有効性の限界を超えるものと思われることからMS患者に多く用いられている。 本レビューはコクラン・レビュー「Dietary intervention for multiple sclerosis」(コクラン・ライブラリ2007年第1号に最初に発表)の更新版である。

目的: 

MSに対する食事レジメンの有効性および安全性に関するMS患者の疑問に答えること。食事習慣の変更はMS患者に対する有効な介入となりうるか。上記の介入の副作用可能性は明らかになっているか。測定されているか。食事介入とその他の既知の治療処置又は対症療法との間に相互作用の可能性があるか。それらについて検討されているか。

検索方法: 

Cochrane Multiple Sclerosis and Rare Diseases of the Central Nervous System Group Specialised Register(2011年11月)、CENTRAL(コクラン・ライブラリ2011年第4号)、MEDLINE (PubMed)(1966年~2011年11月)、EMBASE(embase.com)(1974年~2011年11月)および認められた論文の参考文献リストを検索した。

選択基準: 

ビタミンD補充を除く特定の食事介入、食事計画又は栄養補助食品を食事調整なし又はプラセボと比較する全比較試験ランダム化比較試験(RCT)および比較臨床試験(CCT)]を適格とした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に論文を選択し、試験の質を評価しデータを抽出した。データをRevManに入力し分析した。 二値データは相対リスク(RR)として95%信頼区間(95%CI)で表し、異質性存在下、ランダム効果モデルを用いた(I2 > 60%)。連続データは重み付け平均差を用いて分析し、介入前後の変化の治療群および対照群間ので判定した。

主な結果: 

ランダム化された患者794名を対象に検索戦略から得たPUFAを検討する6件のRCT。 PUFAは、24ヵ月目では疾患進行に対する有意な効果を示さなかった。オメガ-6脂肪酸(11g/日~23 g/日のリノール酸)は144名のMS患者で効果を示さなかった(RR 1.04、95%CI 0.66~1.63)。リノール酸(2.9 g/日~3.4 g/日)は慢性の進行性MS患者65名に対し有益ではなかった(RR 0.78、95%CI 0.43~1.42)。オメガ-3脂肪酸は再発寛解型MS患者292名に対し有益ではなかった(RR 0.82、95%CI 0.65~1.03、P = 0.08)。 再発アウトカムにおける僅かな利益の可能性は、一部試験ではオメガ-6脂肪酸と関連したが、上記所見はエンドポイントの妥当性低下という限界があった。安全性又は患者報告によるアウトカムは判断不可能であった。一般的に、試験の質は不良であった。 ビタミン補充およびアレルゲン非含有の食事に関する試験は、主に臨床アウトカム不足のため適格基準に合致するものがなく、分析対象とはならなかった。

訳注: 

監  訳: 相原 智之, 2014.3.14

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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