変形性関節症の成人における股関節全置換術の後方アプローチと側方アプローチの比較

著者の結論: 

これまでに実施された試験から抽出された情報の質と量は、OAのために一次THAを受ける成人患者に対して最適な術法の選択に確たる結論を下すには不十分である。

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背景: 

股関節の変形性関節症(OA)は進行性の疾患で、完治することはなく、しばしば股関節全置換術(THA)が必要である。THAのおもな方法は後方アプローチと直接側方アプローチである。後方アプローチは行うのが容易であると考えられているが、脱臼の発生率が多いことが報告されている。直接側方アプローチはカップのはめこみが容易で、そのため股関節脱臼の発生率が低く坐骨神経を損傷するリスクが小さいが、跛行のリスクが高い。人工股関節の脱臼は、罹患率とコストの点で臨床的に重大なTHA後の合併症である。

目的: 

原発性OAでTHAを受けた成人患者に対する後方アプローチ後の人工関節脱臼、術後トレンデレンブルク歩行および坐骨神経麻痺のリスクを直接側方アプローチと比較して明らかにし、2003年に実施した前のレビューを更新する。

検索戦略: 

MEDLINE、EMBASE、CINHALおよびコクランデータベースを検索し、先に行った2002年の検索から2005年10月13日現在に更新した。言語の制限はしなかった。

選択基準: 

原発性股関節OAと診断された18歳以上の参加者において、THAの後方アプローチと直接側方アプローチを比較している発表済み試験。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に、入手した論文の方法論的質を評価した。

主な結果: 

参加者241例を組み入れた4件の前方視的なコホート研究が、本レビューに含むための基準に合致した。主要アウトカムの脱臼は、2件の研究で報告されていた。後方アプローチと直接側方アプローチのあいだに有意差は確認されなかった[1/77(1.3%)と3/72(4.2%)、相対リスク(RR)0.35、95%信頼区間(CI) 0.04~3.22]。術後トレンデレンブルク歩行の有無にこれらの術法のあいだで有意差はなかった。神経麻痺または損傷のリスク(すべての神経に関して一緒にまとめて)は直接側方アプローチ群で有意に高かった[1/43(2%)と10/49(20%)、RR 0.16、95%CI 0.03~0.83]。しかしながら、このリスクを2つの術法で神経ごとに、特に坐骨神経について比較すると、有意差はなかった。検討したその他のアウトカムの中では、股関節を広げた時の内旋の平均範囲のみが、直接側方アプローチ群(平均19°、標準偏差13°)に比べて後方アプローチ群(平均35°、標準偏差13°)で有意に大きかった(加重平均差16度、95%CI 8~23)。

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