変形性関節症に対する超音波療法

このコクランレビューの要約では、膝関節または股関節の変形性関節症に対する超音波療法の効果に関する研究結果を示す。前回のレビューでは、超音波療法を偽の超音波治療と比較した結果、疼痛緩和および機能に対する有益性は認められなかった。

今回のレビューの更新版では、変形関節症患者に関する以下の知見が得られた。
−超音波療法は膝関節の変形性関節症患者に有用な可能性がある。

−超音波療法は身体機能を向上させるかもしれないが、この知見は偶然の結果かもしれない。

−エビデンスの質が低いため、疼痛緩和や膝関節の可動性に対してどの程度効果があるのか、明らかにされていない。
−超音波療法は副作用がないと考えられる:副作用は報告されていないが、副作用に関する詳細な情報を入手していない。稀ではあっても重篤な副作用では特に情報が不足している。

股関節の変形性関節症を有する患者に対して超音波療法の有益性を示した試験はない。

変形性関節症とは?超音波療法とは?

変形性関節症は膝関節や股関節など、関節の疾患である。関節の軟骨が減ると、骨は損傷を修復しようとして成長する。しかし、骨が異常に増殖することによって、事態は改善するどころか、悪化する。例えば、骨が変形して関節に痛みや不安定性をもたらす。その結果、身体機能や膝関節の可動性に影響を及ぼす。
超音波療法では、音波を用いて疼痛緩和や身体障害の軽減を図る。医師や理学療法士は、痛みのある部分の皮膚に先端が丸い棒状の器具(プローブ)を当てる。施術を快適にし、音波が患部に到達するのを助けるため、プローブや皮膚の上に超音波検査用ゼリーを塗布する。

変形性関節症患者に超音波療法を使用した場合、2〜8週間で最良の効果が得られると推測される:

痛み
−超音波療法を最長2カ月間受けた患者では、0(痛みなし)から10(かなり痛い)までの痛みの評価尺度がおよそ3に改善した。
−偽の超音波療法を最長2カ月間受けた患者では、0から10の痛みの評価尺度がおよそ2に改善した。
別の方法による同類のエビデンス:この結果を言い替えると:
−超音波療法を受けた100例中37例(37%)の患者で効果が認められた。
−偽の超音波療法を受けた100例中31例(31%)の患者で効果が認められた。
−超音波療法では、偽の超音波療法と比較して、効果が認められた患者数が6例多かった(6%の差)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD003132.pub2】

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