依然として無症候性のB型肝炎ウイルスキャリアに対する中薬(中医学の薬草療法)の効果に関する堅固なエビデンスが待たれる

中薬(中医学の薬草療法)は肝臓病の治療に長い歴史を有する。3件のランダム化臨床試験を対象にレビューを実施した。方法の質が低く、既存の試験数が少ないため、現時点では無症候性のB型肝炎ウイルスキャリアの治療に対する、Jianpi Wenshen recipe(複方)、Phyllanthus amarus(キダチコミカンソウ)およびAstragalus membranaceus(キバナオウギ)などの中薬のエビデンスは不十分である。中薬とプラセボを比較した、これまでより方法の質が高く大規模なランダム化試験が必要である。

著者の結論: 

質の低い1件の試験によると、中薬「Jianpi Wenshen recipe」はB型肝炎ウイルスの無症候性キャリアに対し、抗ウイルス作用を有する可能性がある。しかし、B型肝炎ウイルスの無症候性キャリアに中薬を使用する前に、堅固なランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施する必要がある。

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背景: 

約3億5000万人の人がB型肝炎ウイルスに慢性感染したキャリアであり、肝硬変や肝臓癌による重篤な疾患や死亡のリスクが高い。中薬(中医学の薬草療法)は2000年以上もの間、慢性肝臓病の治療に広く用いられてきた。

目的: 

B型肝炎ウイルスの無症候性キャリアの治療に対する中薬の有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

The Cochrane Hepato-Biliary Group、The Cochrane LibraryおよびThe Cochrane Complementary Medicine FieldならびにMEDLINEおよびEMBASEを検索し、中国の学術雑誌および学会抄録集のハンドサーチを行った(2000年10月)。

選択基準: 

B型肝炎ウイルスの無症候性キャリアを対象としたランダム化試験または準ランダム化試験(追跡期間3カ月以上)。中薬(単方または複方 )をプラセボ、介入なし、一般的な非特異的治療、またはインターフェロン療法と比較した。中薬とインターフェロンの併用をインターフェロン単独と比較した試験も組み入れた。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれデータを抽出した。可能な場合は、ITT解析を実施した。事前に定めたサブグループ解析は、民族、感染時の年齢、および単方または複方により行われた。

主な結果: 

治療後3カ月以上患者を追跡した3件のランダム化臨床試験(患者307名)を組み入れた。方法の質は低かった。複方漢方のJianpi Wenshen recipe はインターフェロンと比較して、ウイルスマーカーに対して有意な効果を示し、血清クリアランスの相対リスクはHBs抗原2.40 (95% CI 1.01〜5.72)、HBe抗原2.03 (95% CI 0.98〜4.20)、HBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョンの相対リスクは2.54 (95% CI 1.13〜5.70)であった。Phyllanthus amarus(キダチコミカンソウ)およびAstragalus membranaceus(キバナオウギ)は、プラセボと比較して有意な抗ウイルス作用は認められなかった。追跡期間が3カ月未満のランダム化臨床試験8件の併合解析では、ウイルスマーカーに対する中薬の顕著な有益性は示されなかった。長期臨床アウトカムおよび生活の質に関するデータが不足していた。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2017.11.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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