新生児呼吸窮迫症候群に対する選択的サーファクタント早期投与と遅延投与との比較

呼吸窮迫症候群(RDS)の早期徴候がみられ補助呼吸を受けている新生児に、選択的にサーファクタントを早期に投与すると、短期的および長期的肺傷害リスクが減ります。 表面張力の低下による肺胞の虚脱を防ぐ物質が肺サーファクタントです。RDSの新生児の肺ではしばしばサーファクタントが不足しています。生存率の上昇においてサーファクタント抽出物の有効性が確認されています。サーファクタント投与をいつ始めるのが最適かという疑問が残っています。試験のレビューでは、RDSの選択的早期治療(生後2時間以内)を後での治療と比較し、早期治療について利益があるというエビデンスを認めました。

著者の結論: 

RDS悪化まで投与を遅らせた場合に比べ、補助換気を要するRDS児への選択的サーファクタント早期投与により、急性肺傷害リスクの低下(気胸および肺間質性気腫のリスク低下)、ならびに新生児死亡および慢性肺疾患リスクの低下が得られた。

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背景: 

臨床試験では、サーファクタント療法が早期産児の呼吸援助の即時の必要性および臨床アウトカムの改善に有効であることが確認されている。試験では、呼吸窮迫症候群(RDS)の予防(予防投与または分娩室投与)または治療(選択的または応急投与)のいずれかのために使用する、多様なサーファクタント製剤について研究されている。いずれかの投与法を用いた場合、気胸罹患率の有意な低下および生存率の有意な改善が認められている。RDSの経過早期に呼吸不全の乳児を治療する利点があるかは不明である。

目的: 

生後2時間以内に呼吸窮迫のため挿管された新生児に対するサーファクタント療法の早期投与と選択的遅延投与の効果を比較すること。計画したサブグループ解析は、天然サーファクタント抽出物と合成サーファクタントを使用している研究についての別個の比較などとした。

検索戦略: 

Oxford Database of Perinatal Trials、MEDLINE(MeSH用語:肺サーファクタント、本文単語:早期、限定:年齢、新生児、発表の種類、臨床試験)、PubMed、抄録、学会およびシンポジウムのプロシーディング、専門家情報を検索し、英語における雑誌のハンドサーチを行った。2012年4月の更新検索では、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、コクラン・ライブラリ2012年第1号)、およびPubMed(1997年1月~2012年4月)を検索した。

選択基準: 

生後2時間以内の早期選択的サーファクタント投与(呼吸窮迫のため挿管されている乳児での気管内チューブからのサーファクタント投与、サーファクタントの用量を特定せず)をRDSと確定している乳児への選択的遅延サーファクタント投与との比較を行っているランダム化比較臨床試験(RCT)および準RCTをレビューに検討した。

データ収集と分析: 

レビューアらが臨床アウトカムに関するデータを臨床試験の報告から抽出した。サーファクタント製剤の種類、在胎週数、出生前ステロイド曝露によるサブグループ解析を実施した。Cochrane Neonatal Review Groupの標準法(スタンダード)に従ってデータ解析を実施した。

主な結果: 

6件のRCTが選択基準を満たした。試験のうち2件は合成サーファクタント(Exosurf Neonatal)を使用し、4件は動物由来のサーファクタント製剤を使用していた。 メタアナリシスでは、RDS挿管患児の早期投与と関連した、新生児死亡リスク[定型的リスク比(RR) 0.84、95%信頼区間(CI)0.74~0.95;定型的リスク差(RD)-0.04、95%CI -0.06~-0.01、6件の研究、乳児3,577名]、慢性肺疾患(定型的RR 0.69、95%CI 0.55~0.86;定型的RD -0.04、95%CI -0.06~-0.01、3件の研究、乳児3,041名)、および36週時の慢性肺疾患または死亡(定型的RR 0.83、95%CI 0.75~0.91;定型的RD -0.06、95%CI -0.09~-0.03、3件の研究、乳児3,050名)の有意な低下が示された。 早期選択的サーファクタント投与に割付けられた挿管患児では、気胸リスク低下(定型的RR 0.69、95%CI 0.59~0.82;定型的RD -0.05、95%CI -0.08~-0.03、5件の研究、乳児3,545名)、肺間質性気腫(定型的RR 0.60、95%CI 0.41~0.89;定型的RD -0.06、95%CI -0.10~-0.02、3件の研究、乳児780名)、総エアーリーク症候群(定型的RR 0.61、95%CI 0.48~0.78;定型的RD -0.18、95%CI -0.26~-0.09、2件の研究、乳児463名)などの急性肺傷害リスクの低下が示された。 28日目の気管支肺異形成(BPD)または死亡リスクの低下傾向も明らかであった(定型的RR 0.94、95%CI 0.88~1.00;定型的RD -0.04、95%CI -0.07~-0.00、3件の研究、乳児3,039名)。他のRDSまたは未熟児合併症に差を認めなかった。 在胎30週未満の患児について2件の研究のみが報告していた。新生児死亡、および最終月経後36週齢の慢性肺疾患または死亡のリスクの低下が認められた。

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