脳卒中後の失語症に対する言語療法

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脳卒中後の言語の問題を、失語症(言語障害)という。脳卒中が起こった人の約3分の1に失語症が発症し、話す、聞いた言葉を理解する、読む、書くというコミュニケーションの一部または全部が障害される。言語療法士は、回復期すべてにおける失語症の評価、診断および治療に関与し、失語症の人およびその介護者と密接に連携している。失語症すべての人に適用可能な、一般的に許容されている治療はない。本レビューの組み入れに適した、2,518名のランダム化参加者を対象とした39件の試験を同定した。全体として、本レビューでは、ランダム化試験から言語療法による利益を示唆するエビデンスが示されたが、言語療法を実施する最善のアプローチを示すエビデンスは不十分であった。

著者の結論: 

機能的コミュニケーション、受容性言語と表出性言語の改善という点で、SLTは脳卒中後の失語症の人に有効であるという若干のエビデンスが本レビューより得られた。しかし、数件の試験の報告は不良であった。通常のSLTにまさる集中的SLTによる潜在的利益について、集中的SLTからの脱落が有意に多かったため交絡が生じていた。また、SLT介入よりも社会的支援から参加者の離脱が多かった。ある一つのSLTアプローチが別のものより有効であるという結論を導くには、不十分なエビデンスしかなかった。

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背景: 

失語症とは、会話表出(発語)、会話理解、読書および書字という言語様式の一部またはすべてに及ぶ、脳損傷後の後天性言語障害である。脳卒中を発症した人の約3分の1に失語症が起こる。

目的: 

脳卒中後の失語症に対する言語療法(SLT)の有効性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Stroke Group Trials Register(最新の検索2011年6月)、MEDLINE(1966~2011年7月)、CINAHL(1982~2011年7月)を検索した。さらに既発表、未発表および進行中の試験を同定しようと、International Journal of Language and Communication Disorders(1969~2005年)、関連性のある論文の参考文献リストをハンドサーチし、学術施設と他の研究者に連絡を取った。言語の制限は設けなかった。

選択基準: 

SLT(言語能力、コミュニケーション能力、活動性および参加の改善を目的とした正式な介入)を、(1)無SLT、(2)社会的支援または刺激(社会的支援およびコミュニケーション刺激を提供する介入であり治療を目標とした介入ではないもの)、(3)別のSLT介入(期間、強度、頻度、介入方法、または理論的アプローチが異なるもの)と比較しているランダム化比較試験(RCT)

データ収集と分析: 

レビューアらは、別々にデータを抽出し、選択した試験の質を評価した。治験責任医師から欠損データを求めた。

主な結果: 

本レビューに参加者2,518名の39件のRCT(ランダム比較51件)を選択した。SLTと無SLTを比較した19件のランダム化比較(参加者1,414名)では、SLTにより患者の機能的コミュニケーション[標準化平均差(SMD)0.30、95%CI0.08~0.52、P=0.008]、受容性言語と表出性言語に有意な利益が得られた。7件のランダム化比較(参加者432名)では、SLTを社会的支援と刺激と比較していたが、機能的コミュニケーションにがあるというエビデンスを認めなかった。25件のランダム化比較(参加者910名)は2つのアプローチをSLTと比べていた。機能的コミュニケーションには示されなかった。これらの試験は一定の範囲の対象特性(年齢、脳卒中後の時間、重症度プロファイル)、介入、アウトカムについて少数の参加者をランダム化していた。適切な統計学的データはいくつかの指標について得られなかった。

訳注: 

監  訳: 江川 賢一,2012.9.27

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

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