急性虚血性脳卒中に対する経口抗血小板療法

レビューの論点

急性虚血性脳卒中患者において、経口抗血小板薬が死亡数を減少させ、生存者の長期転帰を改善するかどうかを、プラセボまたは無治療と比較して、安全性と有効性を検討した。

背景

脳卒中の多くは、脳内の動脈が突然閉塞し、その原因は血栓であることがほとんどである(虚血性脳卒中という)。アスピリンなどの抗血小板薬を直ちに投与することで、新たな血栓の形成を防ぎ、脳卒中後の回復を促すことができる。しかし、抗血小板薬は脳内出血を引き起こす可能性もあり、効果が相殺されてしまうこともある。

研究の特性

2020年8月までの11件の研究を特定し、レビューに使用した。これらの研究には、42,226人の参加者が含まれた。前回のアップデート以降、新たに3件の試験が追加された。前回のレビューと同様に、2件の研究がデータの96%を占めた。レビュー参加者のほとんどが高齢者で、70歳以上の割合がかなり高かった。男性と女性がほぼ同じ割合で試験に参加していた。脳卒中の重症度については、対象となった試験の間で若干の違いがあるようであった。予定された治療期間は5日から3ヶ月まで、予定されたフォローアップ期間は10日から6ヶ月までと様々であった。

主な結果

アスピリンを1日160mgから300mgの用量、脳卒中の症状が出てから48時間以内に開始することで、生存が可能となり、最初の2週間に発生する更なる脳卒中のリスクが減少した。発症後48時間以上経過しても14日以内に治療を開始した場合、本レビューの限られたエビデンスと他の外部データから、このような遅い段階で開始してもアスピリンが有効であることが示唆される。アスピリン160mg~300mgを1日1回経口投与(嚥下困難な人は鼻から胃までのチューブ、または直腸から)し、虚血性脳卒中と推定される発症後48時間以内に開始した抗血小板療法は、早期出血の合併症という大きなリスクを伴わずに、虚血性脳卒中の早期再発リスクを低減し、長期転帰も改善した。今回のレビューでは、ほとんどすべてのエビデンスがアスピリンの試験から得られた。

エビデンスの質

これらの結果に貢献したエビデンスの質は概ね良好であった。

訳注: 

《実施組織》堺琴美、小林絵里子 翻訳[2022.2.15]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000029.pub4》

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