脳卒中を発症した人に対する抗凝固薬による早期治療

レビューの論点
脳卒中を発症してすぐに抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を投与された人が、改善したかどうか、出血の問題があったのかどうかを調べた。

背景
毎年、世界中で何百万人もの人が脳卒中を発症している。脳卒中の大多数は、血栓が脳に至る血管を詰まらせる場合に生じる。脳への血液供給が制限されたり遮断されたりすると、脳の細胞が機能を果たさなくなる。その結果、脳に永続的な損傷を引き起こし、障害が残ったり、場合によっては死に至ることもある。脳卒中によるダメージは、腕や足の機能低下、言語や視覚の障害などを引き起こす可能性がある。脳卒中は時に致命的だが、多くの場合、生存者は発症前にできていたことができなくなる。脳卒中は一般的な病気であり、そのダメージは甚大であるため、研究者は、脳卒中が起こった後、すぐに血栓を取り除く方法を見つけようとしている。その方法の一つとして、抗凝固薬という血液をサラサラにする薬がある。もし、患者が抗凝固薬によく反応すれば、脳卒中の悪い影響を避けられるかもしれない。抗凝固薬の最大の問題点は、出血を起こした場合、患者が非常に深刻な状態に陥る可能性があることである。

検索期間
エビデンスは2021年8月までのものである。

研究の特性
最良の答えを見つけるために、抗凝固薬を他の薬物、有効成分を含まない偽薬(プラセボ)、または標準治療と比較する研究を探索した。研究での比較を公平に行うために、試験に参加した患者全員が、抗凝固薬、他の治療、または標準治療を受ける確率が同じになるようにした(コインを投げて決めるように)。今回、更新するレビューでは、24,025人の脳卒中患者を対象とした28件の研究を対象とした。脳卒中発症後12時間以内に参加者を登録した研究が2件、24時間以内が4件、48時間以内が10件あった。

主な結果
抗凝固薬を投与された人は、長期的な障害が少ないということはなく、より多くの出血を経験した。抗凝固薬治療を受けた患者は、脳卒中後に足や肺に血栓ができる可能性が低くなったが、これらの利点は出血回数の増加によって相殺された。

エビデンスの確実性
エビデンスの確実性に関する評価は、標準的な方法で実施した。研究方法、研究に含まれる被験者の数、研究間の結果の一貫性などの要素に基づいて、エビデンスに対する確実性を評価した。非常に確実性の低いエビデンスとは、結果について確信を持てないことを意味する。同じように、非常に確実性の高いエビデンスとは、このレビューの結果について非常に確信が持てることを意味する。

結論
このレビューにおいて、血栓が原因の脳卒中患者にとって、抗凝固薬の早期使用が全体的に有益であることを示唆するエビデンスは得られなかった。出血の合併症を発症することなく、どのような脳卒中患者が抗凝固薬の恩恵を最も受けるのかを見つけるには、さらなる研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》堺琴美、冨成麻帆 翻訳[2021.11.03]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000024.pub5》

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