メインコンテンツに移動

妊娠を希望していない多嚢胞性卵巣症候群の女性に対する、スタチンの効果とリスクは?

要点
1.スタチンが、月経不順や多毛症、ざ瘡(にきび)、テストステロン(男性ホルモン)の値を改善するかどうかは、不明である。
2.自然排卵について調べた研究はなかった。
3.スタチンは、望ましくない事象がおこるリスクを増加させないかもしれないが、そのエビデンスは限られている。

多嚢胞性卵巣症候群とは何か?

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性は、月経不順、多毛症(顔、胸、背中などに、体毛が男性のように過剰に生える)、アンドロゲン過剰(男性ホルモン値が高い状態)によるざ瘡(にきび)に悩まされることがある。これらの症状はどの年代の女性にも起こりうるが、月経がある女性に最も多い。

多嚢胞性卵巣症候群は、どのように治療するのか?

スタチンは、血液中の「悪玉」コレステロールの濃度を下げ、心臓病を予防する薬である。他の代謝異常も予防するかもしれない。男性ホルモン(テストステロン)の高値は、PCOSの最も顕著な特徴の一つである。アンドロゲン過剰と呼ばれ、インスリン抵抗性や糖尿病、心臓病のリスク増加など、いくつかの代謝異常と関連している。したがって、男性ホルモンの値を下げることは、PCOSの女性にとって有益である可能性がある。スタチンは、男性ホルモン産生を阻害する可能性があるが、テストステロンの値を直接低下させるかどうかは不明である。スタチンを長期に使用すると、リスクがあるかもしれない。そのため、PCOSの女性に対するスタチンの有益性と危険性を評価することが重要である。

調べたかったこと

私たちは、妊娠を積極的に望んでいないPCOSの女性に対して、有益なスタチン系薬剤があるかどうかを知りたかった。スタチンが、以下の項目について効果があるかどうかに興味があった:

1. 月経周期と排卵の規則性を高める。
2. 多毛症、ざ瘡、テストステロンの値を下げる。

また、スタチンに好ましくない作用があるかどうかも知りたかった。本レビューは2011年に発表された初回レビューの更新版である。

実施したこと

妊娠を希望していないPCOSの女性において、スタチンをプラセボ(ダミー治療)、無治療、または他の薬と比較して評価した研究を検索した。参加した女性を無作為に異なる治療に割りつける研究にのみ注目した。このような方法で行われた研究は、通常、治療の効果について最も信頼できるエビデンスを提供する。研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

合計396人の女性を登録した6件の研究を対象とした。ヨーロッパで4件(女性265人)、アメリカで1件(女性20人)、イランで1件(女性111人)の研究が行われていた。そのうち3件の研究で、製薬会社からの資金を受けていた。

主な結果

スタチンがプラセボと比較して、あるいはスタチンとメトホルミンの併用がメトホルミン単独と比較して、月経の規則性を改善するかどうかは、不明である。排卵がおこるかどうかを報告した研究はない。スタチンが多毛症、ざ瘡、テストステロンの値を改善するかどうかは、不明である。望ましくない影響を報告したすべての研究において、スタチンを服用した女性群と他の治療群との間で望ましくない影響に明確な差は認められなかった。

エビデンスの限界

対象とした研究はごく少数で、そのほとんどが少数の女性しか登録していなかった。また、研究によって、結果に一貫性がなかった。これらの理由から、エビデンスへの信頼度は低い。

このエビデンスの更新状況

エビデンスは、2022年11月7日現在のものである。

訳注

《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳[2024.10.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008565.pub3》

Citation
Xiong T, Fraison E, Kolibianaki E, Costello MF, Venetis C, Kostova EB. Statins for women with polycystic ovary syndrome not actively trying to conceive. Cochrane Database of Systematic Reviews 2023, Issue 7. Art. No.: CD008565. DOI: 10.1002/14651858.CD008565.pub3.