要点
- 覚醒度を高める薬(精神刺激薬)が、客観的な睡眠検査で評価される日中の過度の眠気(過眠症)に及ぼす影響は、非常に不確かである。
- 精神刺激薬は、患者の自己評価による過眠症を改善する可能性がある。
- 筋強直性ジストロフィーに対する精神刺激薬の有効性と安全性について、短期および長期の両方について、より多くの研究が必要である。
筋強直性ジストロフィーにおける過眠症とは?
筋強直性ジストロフィーは遺伝性の筋ジストロフィーで、筋力低下と萎縮を引き起こす。日中の過度の眠気(過眠症)は、筋緊張性ジストロフィーがある人に頻繁にみられる訴えであり、呼吸のコントロールの問題に関連している。
筋緊張性ジストロフィーの過眠症はどのように治療するのか?
精神刺激薬は覚醒度を高める薬で、カフェイン、アンフェタミン、セレギリン、メチルフェニデート、モダフィニルが含まれる。
知りたかったこと
筋緊張性ジストロフィーの過眠症の治療において、精神刺激薬がプラセボ(ダミー治療)や無治療よりも優れているかどうかを調べたかった。
実施したこと
筋強直性ジストロフィーおよび過眠症の小児および成人において、精神刺激薬をプラセボまたは無治療と比較した研究を検索した。研究結果を比較および要約し、研究方法や規模などの要因に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。
わかったこと
筋強直性ジストロフィーにおける精神刺激薬の有効性と安全性を評価した研究が6件見つかった。客観的な睡眠検査で評価される過眠症や生活の質(QOL)に対する精神刺激薬の効果は、非常に不確かである。精神刺激薬は、患者の自己評価による過眠を改善する可能性があるが、望ましくない作用のリスクを高める可能性がある。筋強直性ジストロフィーに対する精神刺激薬の有効性と安全性を調べるさらなる研究が必要である。
エビデンスの限界
対象とした研究の参加者は11人から40人の範囲にあり、成人のみである。4週間を超える治療を評価した研究はなかった。
本レビューの更新状況
このレビューは、前回のレビューを更新したものである。2023年1月時点におけるエビデンスである。
《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2024.12.3]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003218.pub3》