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急性脳卒中患者の鉄低減のための薬剤

背景

脳卒中後の脳損傷は複雑で、直接的な損傷および遅れて生じる損傷がある。局所の鉄分濃度の乱れは、遅発性の脳損傷に関連している可能性がある。そのため、脳卒中患者の治療において鉄分の毒性を抑えることが潜在的な目標となり得る。鉄キレート剤は、血中および局所組織の余剰な鉄分と結合できるため、鉄分の蓄積や鉄分に関連する脳損傷を軽減する可能性がある。動物実験では、鉄キレート剤が脳卒中発生後の脳細胞を保護することが示されている。

検索日

2019年9月2日に最新の検索を実施した。

研究の特性

急性期脳卒中に対するデフェロキサミンを用いた鉄キレート療法の良好な臨床的アウトカムに対する有効性を検討した2件の試験(参加者333例)を同定した。両試験ともに、急性脳卒中のサブセットとして脳内出血をきたした人を対象に効果を検討していた。

主要な結果

研究をプールすることができなかったという限界があり、データから良好な脳神経学的アウトカムに群間差は示されなかった。いずれの試験でも、デフェロキサミンの投与は安全であると報告された。1件の試験では、血腫の周囲にみられる浮腫の形成がデフェロキサミン群でわずかに抑えられたが、もう1件の試験ではそのようなことはなかった。

エビデンスの確実性

脳卒中後の脳出血に対するデフェロキサミン使用が脳神経学的アウトカムを改善するというエビデンスの確実性は低い。これは、フォローアップ期間が短く、結果の測定方法が異なる2件の小規模な研究に基づくものである。副作用に関しては、限定的なエビデンスしか得られていない。虚血性脳卒またはくも膜下出血の患者に対する鉄キレート療法の付加価値は依然として不明である。

訳注

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2021.11.12] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009280.pub3》

Citation
Van der Loo LE, Aquarius R, Teernstra O, Klijn CJM, Menovsky T, van Dijk JM, Bartels R, Boogaarts HD. Iron chelators for acute stroke. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 11. Art. No.: CD009280. DOI: 10.1002/14651858.CD009280.pub3.