痛みを伴う処置を受ける乳児の痛みを管理するオピオイド

要点

- 強力なエビデンスがないため、痛みを伴う処置を受ける乳児の痛みを管理するためのオピオイドの利点とリスクは不明である。

- プラセボ(薬を含まないが、試験中の薬と同じように見える「ダミー」治療、偽治療)と比較すると、オピオイドは、処置中に特定の尺度で評価される痛みを軽減するかもしれないが、処置の1~2時間後に他の尺度で評価される痛みには違いがないかもしれない。

- 他の疼痛スコアや異なる時点における疼痛評価、徐脈(心拍数の低下)や低血圧のエピソードに対するオピオイドの影響については、非常に不確かである。オピオイドは呼吸停止のエピソードを増加させる可能性がある。

なぜオピオイドは、乳児の処置中の痛みを管理するために投与されるのか?

乳児(特に生後4週間)は、入院中に痛みを伴う処置を受けることが多い。成人と同様、これらの処置中も、継続した疼痛管理とコントロールが必要である。オピオイドは、体内の細胞にあるオピオイド受容体と相互作用することで効果を発揮する、痛みを和らげる薬の幅広いグループであり、乳幼児によく使用される。

知りたかったこと

痛みを伴う処置を受ける乳児に、オピオイドが以下の治療と比較して、どのような影響を及ぼすかを調べたかった:

- 無治療またはプラセボ;

- 薬物以外の治療(甘い溶液など);

- 他の薬;

- 異なる種類のオピオイド;

- または同じオピオイドを異なる経路、例えば注射と経口で投与する。

行ったこと

上記の5種類の比較に関する研究を検索した。その結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

合計823人の乳児を対象とした13件の研究を対象とした。最も大規模な研究は150人、最も小規模な研究は12人であった。すべての研究は病院で行われた。インドで4件、イタリアと英国で各2件、カナダ、フィンランド、イラン、米国で各1件、フランスと米国で行われた国際研究が1件である。

7件の研究ではオピオイドとプラセボが比較され、2件の研究ではオピオイドと甘い溶液の経口投与や乳児の体に触れるなどの他の治療法が比較され、5件の研究ではオピオイドと他の薬剤が比較された。

プラセボと比較すると、オピオイドはおそらく処置中に特定の尺度で評価される痛みのスコアを減少させるが、処置の1~2時間後に他の尺度で評価される痛みのスコアはほとんど、あるいはグループ間で差がない。他の疼痛スコアや異なる時点で評価された疼痛に対するオピオイドの効果については、非常に不確かである。 徐脈、低血圧、蘇生を必要とする呼吸停止のエピソードに対するオピオイドの影響に関するエビデンスは非常に不確かである。オピオイドは呼吸停止のエピソードを増加させる可能性がある。医療に対する親の満足度を報告した研究はない。

乳児の体に触れたり、他の薬剤を投与するなどの他の治療法と比較した場合、オピオイドがどのよう結果に影響を及ぼすかについてのエビデンスは非常に不確かである。

エビデンスの限界は?

研究が少なく、エビデンスが十分でないため、結果を確信することはできない。研究を実施していた人が、何の治療を行っているかについて知っていた可能性があった。私たちが興味を持っているすべてのデータについて提供してくれる研究はほとんどなかった。

本レビューはいつのものか?

2021年12月までの研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2023.09.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015056.pub3》

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