人工のCOVID-19特異的モノクローナル抗体は、成人におけるCOVID-19の予防に有効か?

要点

COVID-19の曝露前の予防:

- チキサゲビマブ/シルガビマブは、COVID-19の感染者数およびCOVID-19症状の発現をおそらく減少させ、入院者数を減少させる可能性がある;

- カシリビマブ/イムデビマブは、COVID-19の感染者数およびCOVID-19症状の発現を減少させる可能性があり、好ましくない影響(重症度を問わず)がわずかに増加する可能性がある;

COVID-19の曝露後の予防:

- バムラニビマブはCOVID-19の感染者数を減少させると思われる;

- カシリビマブ/イムデビマブは、COVID-19の感染者数およびCOVID-19症状の発現を抑制し、好ましくない影響(重症度を問わない)の発現を抑制する。

モノクローナル抗体とは何か?

病気から身を守るために、体は抗体を作る。しかし、病気より回復した人から採取した細胞から人工的に作ることもある。

特定の1つのタンパク質のみを標的とする抗体が「モノクローナル抗体」である。この場合、SARS-CoV-2ウイルス(COVID-19の原因)のタンパク質である。それらはウイルスに付着して、ヒトの細胞内への侵入や複製を阻止し、感染を予防し撃退する。それらは予防接種に反応しない人、反応が悪い人に関係する。

何を知りたかったのか?

COVID-19特異的モノクローナル抗体が、ウイルスに曝露された人、あるいは曝露されるリスクの高い人のCOVID-19の予防に有効かどうかを検討した。以下の評価を行った:

- COVID-19の感染;

- COVID-19の症状発現;

- あらゆる原因による死亡;

- 入院;

- 生活の質 (QOL);

- 感染症や心疾患などの好ましくない影響;

- 生命を脅かすような状態、入院、障害、死亡などの重篤な好ましくない影響。

本レビューで行ったことは何か?

年齢、性別、人種を問わず、COVID-19を予防するために、モノクローナル抗体(例:バムラニビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ)とプラセボ(偽治療)、別の治療、または無治療を比較する試験を検索した。

データを要約し、研究方法や規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

何がわかったのか?

SARS-CoV-2に曝露される前の人(曝露前予防)を調査したものが2件、感染者と接触した人(曝露後予防)を調査したものが2件、合計9,749人を含む4件の研究を特定した。研究は、オミクロンの変種が出現する前、およびワクチンが広く実施される前、または実施中に行われた。参加者はベースライン時にワクチン未接種であった。

曝露前予防措置

1件の試験(5,197人)では、チキサゲビマブ/シルガビマブとプラセボが比較された。参加者は、野生株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に曝露された。

チキサゲビマブ/シルガビマブは:

- 症状の発生を抑制する;

- おそらく感染者数を減らす;

- 入院患者数を減少させる可能性がある;

- あらゆる原因による死亡、好ましくない影響(あらゆる重篤度)、および重篤な好ましくない影響に対して、ほとんどあるいは全く影響を与えない可能性がある。

QOL(生活の質)、または軽度や重度の好ましくない影響に関するデータは見つからなかった。

1件の試験(969人)では、カシリビマブ/イムデビマブとプラセボを比較した。参加者は、野生株、アルファ株、デルタ株に曝露された可能性がある。

カシリビマブ/イムデビマブは:

- 感染者数および症状の発現を抑えることができる;

- 死者はいなかった;

- 好ましくない影響(重篤度を問わず)をわずかに増加させる可能性がある;

- カシリビマブ/イムデビマブが重篤な望ましくない作用に影響を及ぼす可能性があるかどうかは不明である。

30日以内のCOVID-19患者数、30日以内の症状の発現、30日以内の入院、QOL(生活の質)、軽度の好ましくない影響についてのデータは見つからなかった。

曝露後予防(2件の試験)

1件の試験(966人)では、バムラニビマブとプラセボを比較した。参加者は野生株に曝露された可能性がある。

バムラニビマブは:

- おそらく感染者数を減らす;

- あらゆる原因による死亡にほとんど、または全く影響を与えない可能性がある;

- 望ましくない作用(重篤度を問わない)および重篤な望ましくない作用をわずかに増加させる可能性がある。

症状発現者の数、入院数、QOL(生活の質)、軽度と重度の好ましくない影響に関するデータは見つからなかった。

1件の試験(2,617人)では、カシリビマブ/イムデビマブとプラセボを比較した。参加者は、野生株、アルファ株、そしてデルタ型(曝露の可能性はあるかもしれないが、実際はなさそう)に曝露された可能性がある。

カシリビマブ/イムデビマブは:

- 感染者数、症状の発現、好ましくない影響(重症度を問わない)を軽減する;

- 重症な好ましくない影響をわずかに軽減する可能性がある;

- 死亡、入院、重篤な好ましくない影響にほとんど、または全く影響を与えない可能性がある。

QOL(生活の質)や軽度の好ましくない影響に関するデータは見つからなかった。

エビデンスの限界は何か

1件の研究が、それぞれの比較を報告した。オミクロン変異体の発生前に行われた試験の開始時点では、参加者全員がワクチン未接種であった。エビデンスの確実性は、高いものから非常に低いものまで幅があった。関連する結果について特定したエビデンスには高い確実性があるが、この知見は、ワクチン接種を受けた人やオミクロンのように研究期間外に発生した変異体には転用できない。チキサゲビマブ/シルガビマブはオミクロン変異体に有効であることが実験室での研究で示されているが、臨床試験によるデータはない。このレビューに含まれる他のモノクローナル抗体は、実験室での研究ではオミクロン変異体に対して効果がなかった。

現在進行中の4件の研究は、今回の結論を変える可能性があり、新しい変異体やCOVID-19ワクチンがCOVID-19の予防におけるモノクローナル抗体の効果にどのように影響するかを理解するのに役立つと思われる。

このレビューの更新状況

エビデンスは2022年4月27日までのものである。

訳注: 

《実施組織》堺琴美、 阪野正大 翻訳[2022.08.08]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014945.pub2》

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