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新規抗精神病薬ブレクスピプラゾールのうつ病治療における利益と有害性は、ダミー錠や抗うつ薬と比較した場合、どのようなものか?

要点

- 抗うつ薬に追加されたブレクスピプラゾールは、抗うつ薬に追加されたプラセボ(ダミー錠)よりもうつ病の症状を軽減するのに優れている。

- ブレクスピプラゾールは、体重増加やアカシジア(常に動きたくなるような落ち着きのなさ)と関連することが多い可能性がある。

うつ病とは?

うつ病は一般的な精神疾患で、気分の落ち込み、喜びを感じられない、睡眠障害、体重減少、疲労や気力の低下、会話や動作が遅くなる、無価値感や過剰な罪悪感、集中力の欠如、自殺を考えるようになるという症状を引き起こす。うつ病と診断されるには、気分の落ち込みや快感の喪失など、これらの症状のうち5つ以上を少なくとも2週間以上経験する必要がある。

どのように治療するか?

うつ病の症状が軽度でない限り、治療の最初の選択肢は抗うつ薬であるが、抗うつ薬が初めて処方された場合に効果があるのは半数程度である。抗うつ薬だけではうつ病の治療が十分でない場合、抗うつ薬の効果を助けるために別の薬を追加するという選択肢もある。その他の選択肢としては、抗うつ薬を別の抗うつ薬に変更する、会話療法、電気パルスによる脳への刺激などがある。ブレクスピプラゾールは新しい薬で、単独では効かない抗うつ薬に追加して使用することができる。ブレクスピプラゾールはうつ病の治療に0.5mgから3mgの用量で処方される。ブレクスピプラゾールは統合失調症の治療薬としても承認されている。

知りたかったこと

うつ病の治療においてブレクスピプラゾールを単独で処方した場合、あるいは他の抗うつ薬と併用した場合の効果を検討し、その効果を抗うつ薬やプラセボの効果と比較したいと考えた。そのために、いくつかの効果を調べた。まず、ブレクスピプラゾールがうつ病の症状をどの程度軽減させるかを調べた。次に、何らかの理由で研究への参加を断念した参加者の数を調べた。第三に、どれだけの人が好ましくない効果のために参加をやめたかを調査した。第四に、ブレクスピプラゾールの使用によってどのような副作用が出現するかを検討した。また、ブレクスピプラゾールが参加者の生活の質(QOL)にどのような影響を与え、日常生活機能にどのような影響を与えたかも知りたかった。

実施したこと

うつ病に対するブレクスピプラゾールの効果をプラセボまたは抗うつ薬と比較して報告した研究を科学的データベースから検索した。参加者を無作為にどちらか一方の治療に割り付けた研究のみを対象とした。参加者も、治療効果を評価するチームも、何が処方されたかを知らなかったので、何が処方されたかという知識が結果に影響することなく、結果を客観的に評価することができた。結果を比較し、要約し、試験結果が薬の実際の効果をどの程度表しているかというエビデンスの確実性を評価した。効果の大きさ、使用された方法、結果の報告内容や方法など、さまざまな要因に基づいて信頼性を判断した。

発見したことは何か、その限界は?

3,424人が参加した9件の研究が見つかった。参加者の3分の2が女性で、3分の1が男性であった。

参加者が自分で2種類以上の抗うつ薬による治療を試みた後にブレクスピプラゾールを追加した研究のみを発見した。抗うつ薬に追加したブレクスピプラゾールは、抗うつ薬に追加したプラセボよりも、8週間の治療後にうつ病の症状をより軽減させるという高い確実性のエビデンスが得られた。ブレクスピプラゾールはプラセボと比較して、抗うつ薬と併用した場合、うつ病の症状が消失する可能性が高かった。ブレクスピプラゾールがプラセボよりも体重増加や落ち着かないという主観的な感情を引き起こす頻度が高いことを示唆する中等度の確実性のエビデンスを得た。望ましくない影響の測定方法や、すべての研究で望ましくない影響を同じ方法で測定したかどうかについての情報が見つからなかったため、望ましくない影響に対する効果については確信が持てない。

何を知りたかったのか?

小児や高齢のうつ病患者に対するブレクスピプラゾールの効果を検討した研究はなかった。ブレクスピプラゾールをうつ病に18~24週間という長期間投与した場合にどのように作用するかを調べたかったが、1件の研究しか見つからず、その結果は結論を出すには不十分であった。

このレビューの更新状況

エビデンスは2021年11月1日現在のものである。

訳注

《実施組織》 阪野正大、伊東真沙美 翻訳[2024.01.20]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013866.pub2》

Citation
Ralovska S, Koychev I, Marinov P, Furukawa TA, Mulsant B, Cipriani A. Brexpiprazole versus placebo or other antidepressive agents for treating depression. Cochrane Database of Systematic Reviews 2023, Issue 7. Art. No.: CD013866. DOI: 10.1002/14651858.CD013866.pub2.