遅発性新生児敗血症に対する抗生物質レジメン(投与法)

レビューの論点

生後72時間から生後1か月までの新生児に発症した、遅発性敗血症に対するさまざまな抗生物質レジメン(投与法)について、利用可能なエビデンスをレビューした。

背景

新生児の敗血症は、感染症に対する体の反応によって引き起こされる、重篤で死に至る可能性のある状態である。新生児敗血症は、世界の新生児死亡原因の第3位に挙げられる新生児の敗血症のもたらす影響は大きいにもかかわらず、診断と治療における質の高いエビデンスは乏しい。本コクラン・レビューは2005年に初版が発表された。新生児敗血症に対する最も適切な抗生物質の使用指針を特定するには、適切に実施された最新のレビューに基づいてこれらの指針を決定する必要がある。したがって、遅発性の新生児敗血症に対するさまざまな抗生物質レジメン(投与法)の効果を評価するこのようなレビューが必要である。

研究の特徴

エビデンスは2021年3月現在のものである。580名の参加者を対象とした5件の試験を対象とした。対象となった試験では、5種類の抗生物質レジメン(投与法)が比較された。

主な結果

5件の試験を対象とした。セファゾリン+アミカシンとバンコマイシン+アミカシンを比較した試験が1件、チカルシリン+クラブラン酸とフルコキサシリン+ゲンタマイシンを比較した試験が1件、クロキサシリン+アミカシンとセフォタキシム+ゲンタマイシンを比較した試験が1件、メロペネムと標準治療(アンピシリン+ゲンタマイシンまたはセフォタキシム+ゲンタマイシン)を比較した試験が1件、バンコマイシン+ゲンタマイシンとバンコマイシン+アズトレオナムを比較した試験が1件あった。

全死因による死亡、重篤な有害事象(重篤な合併症)、循環補助、腎毒性、神経学的発達障害(行動、記憶、学習能力に影響を及ぼす脳の機能障害)、壊死性腸炎(腸の組織が炎症を起こして細胞壊死を起こす)の評価では、5件の比較試験のいずれにおいても差がなかった。現在のエビデンスでは、データが不足しているため、ある抗生物質のレジメン(投与法)が他の抗生物質よりも優れていることを確認することも否定することもできない。

エビデンスの質

すべての知見が極めて質の低いエビデンスに基づいている。この5件の試験は、バイアスのリスクが高かった(つまり、結果がプラス側に偏っている可能性のある方法で試験が行われていた)。さらに、5件の試験とも参加者が少なく、本レビューの結果は不正確なものとなった。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2021.06.08]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CDCD013836.pub2》

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