急性心不全における体液除去療法

レビューの論点

急性心不全(AHF)における体液除去療法である限外ろ過(UF)にどのような効果があるか?

背景

急性心不全(AHF)は、心臓のポンプ機能が低下し、肺や体に液体が溜まる一般的な疾患である。これにより、呼吸困難、心臓や腎臓へのダメージ、再入院の多さ、死亡率の高さなどの問題が発生する。通常の治療では、この余分な水分を取り除くために利尿剤と呼ばれる薬を服用するが、人によっては効かないことがある。限外ろ過(UF)は、体液を素早く除去する代替療法である。患者の血液を回路で取り出し、機械でろ過してから患者に戻す。これは、モニタリング、太い中心静脈カニューレ(血管に入れる管)、血液をサラサラにする薬を必要とする。急性心不全(AHF)において限外ろ過(UF)が有効であるか、安全であるかは不明である。

研究の特性

急性心不全(AHF)患者を対象に限外ろ過(UF)と通常のケアを比較した研究を検索した。2021年6月までのすべての関連する研究を検索したところ、約1,200人を対象とした14件の研究を特定した。心筋梗塞や感染症にかかったことのある人など、非常に病弱な人は研究の対象外となることが多かった。

エビデンスの確実性

妥当性性のあるツール(GRADE)を用いて、結果の確信度を評価した。研究対象のばらつき、研究間での結果の違い、研究デザインの限界などにより、全体的にエビデンスの確実性は低度であった。

主な結果

短期間の追跡調査で限外ろ過(UF)が死亡率に影響を与えるかどうかは、十分なデータがないため不明である。最も長い追跡期間においても、限外ろ過(UF)は死亡率にほとんど影響しないかもしれない。

限外ろ過(UF)は、短期的にも長期的にも病院への再入院率を低下させる可能性がある。特に、心不全による再入院率は、長い期間(最大1年)にわたって追跡調査を行った場合に、31%減少する可能性がある。心不全による再入院を減らす効果は、限外ろ過(UF)で治療を受けた10人中1人に見られる。

限外ろ過(UF)は、長期の透析が必要となるリスクを高める可能性がある。限外ろ過(UF)が退院後30日目の腎機能に影響を与えるかどうか、あるいは限外ろ過(UF)によって中心静脈ラインによる合併症のリスクが高くなるかどうかは明らかではない。限外ろ過(UF)が機械的な呼吸補助を必要とすることへの影響や、コストや医療経済への影響を調査した研究はない。

現在の治療法に併用した限外ろ過(UF)を調査する、より確実性の高い研究が必要である。今後の研究においては、中長期的に、心不全に関連する再入院率、心血管疾患による死亡率、腎障害など、患者にとって重要なアウトカムに焦点を当てるべきである。

訳注: 

《実施組織》 堺琴美、阪野正大 翻訳[2022.01.30]《注意》 この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013593.pub2》

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