治療抵抗性うつ病の人に、磁気けいれん療法は有効な追加治療となるか?

レビューの論点

治療抵抗性うつ病(TRD)に対する磁気けいれん療法(MST)の有効性と受容性について。

なぜこれが重要なのか?

うつ病患者の30%以上は、薬や心理療法に対する反応が悪いと言われている。そのような方々をTRD患者と呼んでいる。非TRD患者と比較して、TRD患者は障害の発生率や経済的負担が非常に高くなっている。

電気けいれん療法(ECT)は、TRD患者にとって重要な治療法である。しかし、ECTは記憶喪失などの認知機能への悪影響を伴うことが多い。磁気けいれん療法(MST)は、ECTに代わる可能性のある治療法で、認知機能への悪影響が少ない。したがって、MSTがTRD患者の治療にどれだけ効果があるかを知ることは重要である。

方法

2020年3月、治療抵抗性うつ病に対するMSTの研究について、ランダム化比較試験(RCT)を検索した。参加者は無作為に異なる治療を受けた。この研究デザインは、最も信頼性の高いエビデンスを提供する。

治療の効果(症状の重さ、生活の質、社会的機能の改善、自殺者数、自殺企図者数、自傷行為者数)、副作用の有無(認知機能、脱落者数、有害事象数)などの結果が得られた。

結果

65人の参加者を含む3件の研究を対象とした。これらの研究では、6週間で最大12回の治療セッションを行うMSTとECTを比較した。既存のエビデンスでは、MSTとECTの間に効果や耐性の違いは認められなかった。

しかし、この研究結果がどれほど信頼できるかはわからない。すべての知見は、少数の参加者によるわずかな研究に基づいていた。参加者は自分がどの治療を受けたかを知っていた。研究は、プロトコルとは異なる方法で行われた。参加者が異なる治療法にどのように割り振られたか、これらの研究からの参加者の脱落があったかどうかなど、いくつかの重要な情報が報告されていない。すべての研究は、ドイツの単一の研究チームによって行われ、MSTデバイスのメーカーから一部資金提供を受けた。

結論

TRD患者に対するMSTの効果に関するエビデンスは、現時点では不十分である。入手可能なデータを分析した結果、MSTとECTの間に明確な違いがあるか否か不明である。エビデンスの確実性は非常に低い。MSTの効果をさらに検証するためには、大規模で長期にわたる、十分に計画され、十分に報告された試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳[2021.06.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013528.pub2》

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