スミス・レムリ・オピッツ症候群に対するスタチン療法

レビューの論点

スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)の患者に対して、スタチンを用いた治療単独またはコレステロール療法との併用は、コレステロール療法単独と比較して、より良い結果(生存率、生活の質、神経行動異常の頻度または重症度、成長パラメータまたはバイオマーカーレベルの変化など)をもたらすか、また有害作用の発生リスクはどの程度あるのか?

背景

スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)は遺伝性の奇形症候群であり、コレステロールが体内で生成されず、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)や8-デヒドロコレステロール(8-DHC)などの、通常であればコレステロールに変換されるいくつかの毒性分子が蓄積されることで発症する。つまり、SLOSでは正常な身体的成長が妨げられ、さまざまな程度の知的障害や発達遅延(あるいはその両方)および行動異常(例えば、興奮性、攻撃性、不安性、注意欠陥多動性障害(ADHD)、衝動性、睡眠障害など)を示す可能性がある。また、SLOSはさまざまな身体的異常や障害を引き起こす可能性があることも特徴的である。現在のところSLOSの治療法はないが、SLOS患者の診療においては、コレステロールの補充療法が一般的な対処法とされている。これは、この疾患の現在の生化学的知見のみに基づくものである。しかし、実験室や独立した個人で実施された研究から、スタチンがSLOS患者の治療に役立つ可能性があることを示唆するエビデンスが存在する。

研究の検索日

2022年2月15日までに検索された研究が対象となった。

研究の特徴

このレビューでは、デザインの異なる6件の研究が対象とされ、合計61人のSLOS患者(ほとんどが男性)が対象となった。そのうち5件は18歳以下の患者のみを対象とした研究であった。すべての研究において、スタチンとコレステロールの併用療法と、コレステロール単独の補充療法とが比較されていた。しかし、スタチンやコレステロールの投与量や製剤、治療期間などは異なっていた。

主な結果

スタチンとコレステロールの併用療法が、コレステロールの単独補充療法と比較して、SLOS患者の生存率またはQOLに影響を与えるというエビデンスは見つからなかった。また、エビデンスに対する信頼性が低いため、スタチンとコレステロールの併用治療が、コレステロール単独療法と比較して、SLOS患者の神経行動学的症状または身体成長に対して良い効果をもたらすかどうかについても不明であった。スタチンとコレステロールの併用療法を受けているSLOS患者は、コレステロールの単独補充療法のみを受けている患者と比較して、スタチンの使用に関連した有害事象を経験する確率が高いと考えられた。最後に、SLOS患者の血液中で通常測定されるさまざまなバイオマーカーのレベルに対するスタチンの効果については不明であった。

訳注: 

《実施組織》小泉悠 翻訳、小林絵里子 監訳[2022.12.05]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013521.pub2》

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