認知症や軽度認知障害(MCI)のスクリーニングのためのAddenbrooke's Cognitive Examination III(ACE-III)とmini-ACEの精度は?

なぜ認知症であることの識別が重要なのか?

認知症と診断される人は、今後10年で大幅に増加すると予想されている。そのため、認知症やMCIの診断を助けるために、記憶や学習を評価できるツールの必要性が高まっている。現在、臨床現場ではACE-IIIやmini-ACEが使用されているが、認知症の鑑別精度についてのエビデンスは十分に確立されていない。

このレビューの目的は何か?

本レビューの目的は、様々な医療現場における認知症とMCIの識別において、ACE-IIIとmini-ACEがどれほど正確なものであるかを調べることであった。認知症が疑われる患者さんにこれらの検査を行う。

このレビューで何が検討されたか?

ACE-IIIには21問の質問があり、合計スコアは100点である。認知症の患者さんや認知症が疑われる患者さんにこれらの検査を行う。質問は脳の機能の5つの分野をカバーしており、点数が高いほど機能が優れていることを示している。mini-ACEの方が短めで、質問数は5問のみ、総得点は30点となっている。閾値は認知症の診断を考慮すべきスコアで、通常ACE-IIIでは100点中82点または100点中88点、mini-ACEでは30点中21点または30点中25点である。

ACE-IIIやmini-ACEは単独で認知症の診断を行うのではなく、他の臨床情報や検査に加えて使用することで臨床家の助けになる。

主な結果

このレビューには、合計1711人の患者を対象とした7つの研究が含まれており、4つの研究でACE-III、3つの研究でmini-ACEが検討された。研究間で有意があったため、これらの研究の情報を統計的に統合しなかった。

認知症またはMCIを有する患者を識別するACE-IIIとmini-ACEの両方の能力にはばらつきがあった(認知症を有すると正しく識別されたのは70%から99%、MCIは64%から95%であった)。しかし、検査で偽陽性と判定された人の数にはより研究間のばらつきがあった(0%から96%の人が認知症と誤って判定され、8%から54%の人がMCIと誤って判定された)。より低い検査閾値では、認知症の誤診は少なかった(認知症またはMCIではないと正しく認識された人の64%から100%の間であった)。

レビューの研究結果はどれくらい信頼できるか?

試験の方法については、患者の識別方法や登録方法、ACE-IIIやmini-ACEの実施方法がよく記載されていないなどの問題点があった。これらの研究は小規模であり、結果に確信を持てるほどに十分な参加者の数が確保されなかった。これらの問題は、ACE-IIIやmini-ACEの精度が実際よりも良く見えたのではないかということを意味している。

レビューの結果は誰に適用できるか?

研究の平均年齢は60歳を超えていた。認知症の人の割合は研究間で異なっていた(範囲は15%から55.6%であった。)いずれの研究も専門医のもとで行われたものであり、ACE-IIIやmini-ACEが一般診療や地域社会で使用できるかどうかは不明である。4つの研究はイギリスで、2つは中国で、1つは日本で行われた。

このレビューは何を示唆するのか?

全体的に、含まれた研究の質、規模、数から、認知症やMCIの識別にACE-IIIとmini-ACEのどちらを使用すべきかについての決定的な結論は得られていない。これらの知見は、地域社会や一般集団を調査した研究がなかったため、病院でのみ使用することができる。ACE-IIIやmini-ACEは、認知症の診断を行う際の臨床評価の一部としてのみ使用し、単独での使用は避けるべきである。異なる医療環境、言語、文化におけるACE-IIIとmini-ACEを調査するためには、より多くの研究が必要である。

本レビューの更新状況

レビュー著者らは、2019年4月までの研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳[2020.09.16]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013282.pub2》

Tools
Information
Share/Save