生後18ヶ月以下の乳幼児においてHIVのウイルス分子を検出する迅速検査

なぜHIV感染症の診断方法の改善が重要なのか?

今でも、毎年150万人もの乳幼児がHIV感染のリスクにさらされていると言われている。HIVに感染しても治療を受けずにいると、およそ50%~60%の乳幼児は2歳になるまでに死んでしまう。生まれる前に感染した子どもは、特に死亡のリスクが高い。HIVは、完治が難しい病である。しかし、抗レトロウイルス薬(ART)と呼ばれる薬を使えば、HIVを抑制できる。HIVが早期に発見された場合、この薬を服用することで、HIV関連の感染症による重篤な状態や死亡を防ぐことができる。したがって、HIVのウイルス遺伝子分子を患者のそばで迅速かつ正確に検出する検査は、早期に適切な治療を受ける機会を増やし、HIVが検出されないまま治療の機会を逃す人を最小限に抑えることができる。

レビューの目的

生後18ヶ月以下の乳幼児における、HIVの主要なタイプ(HIV-1/HIV-2)の感染を検出するための分子学的迅速検査の精度を調べる。

検討した内容

検査室で行われたウイルス学的な検査を基準として、分子学的迅速検査の測定結果を比較して報告した論文の精査

主な結果

15,120人の参加者を対象とし、15の評価を終えた12件の研究で、HIV感染を診断するための分子学的迅速検査を比較検討していた。

このレビューの強みと限界

レビューには、十分な数の研究と参加者が含まれていた。すべての研究がサハラ以南のアフリカで行われており、レビューの結論が、HIVが日常的に見つかり、疾病対策プログラムの対象となることが多い地域社会に応用するのに適していると言える。一方、対象とした評価のうち1/3において、分子学的迅速検査が患者のそばではなく検査室で行われていたが、検査を行った場所による検査の精度に差が認められなかった。

このレビューの結果が適用される対象者

HIVの感染リスクにさらされた生後18ヶ月以下の乳幼児。

このレビューが示唆すること

理論的に、生後18ヶ月以下の子ども1,000人のうち、100人がHIVに感染している状況では、100人が分子学的迅速検査で陽性となり、そのうち1人は感染していない(結果が偽陽性)。また、900人が分子学的迅速検査で陰性となり、そのうち1人は実際に感染している(結果が偽陰性)ということになる。

このレビューの更新状況

エビデンスは2021年2月2日までのものである。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳 [2022.02.04] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013207.pub2》

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