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ホルモン療法は、性転換のための性別移行中のトランスジェンダーの女性に役立つか?

背景

トランスジェンダーの女性は、自分が間違った性的特徴を持った体に生まれてきたと感じているかもしれない。その結果、重大な心理的苦痛(性別違和)や、男性的な身体的・性的特性を自分自身のジェンダーである女性により一致するように適応させたいという願望が生じる可能性がある。これが性別移行と呼ばれる過程である。性別移行を支援するための対策が講じられていない場合、より大きな心理的苦痛をもたらすことになる。男性の体を持つトランスジェンダーの女性が性別移行を達成するのを助けるための治療法の一つが合成女性ホルモンである。これらのホルモンは、口から摂取したり、皮膚から吸収したり、筋肉に注射したりすることができる。

研究の特性

男性から女性への性別移行期にあるトランスジェンダー女性(16歳以上)を含むランダム化対照試験(RCT)を探した。RCTは、いくつかのタイプのバイアスの可能性を減らすことができる研究の一種である。トランスジェンダーの女性の性別移行を支援するために使用される異なるホルモン治療(エストロゲン単独、テストステロン遮断薬単独、またはテストステロン遮断薬と併用したエストロゲン)を比較するか、またはこれらのホルモン治療をプラセボ(実際の治療と同じように見えるが、医学的効果がない偽物またはダミーの治療)と比較する研究をこのレビューに含むこととした。私たちは、ホルモン治療がトランスジェンダーの女性が満足して性別移行するのに役立つかどうかを見てみたいと思った。また、治療による健康被害がないかどうかも見てみたいと思った。

主な結果

2019年12月19日までの研究を検索した。このレビューに含めることができる関連する終了した研究を見つけることができなかった。2020年末まで参加者を募集している進行中の1つの研究を見つけた。この研究は、タイのトランスジェンダー女性を対象に、エストラジオール吉草酸エステル+シプロテロン治療とエストラジオール吉草酸エステル+スピロノラクトン治療の効果を比較している。

エビデンスの質

私たちのレビューでは、トランスジェンダー女性の性別移行を支援するためにホルモン療法を使用した場合、効果的で安全かどうかを調べたRCTは見つからなかった。そのため、これらの疑問を研究するためには、質の高いRCTが必要とされる。

訳注

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2021.02.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013138.pub2》

Citation
Haupt C, Henke M, Kutschmar A, Hauser B, Baldinger S, Saenz SR, Schreiber G. Antiandrogen or estradiol treatment or both during hormone therapy in transitioning transgender women. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 11. Art. No.: CD013138. DOI: 10.1002/14651858.CD013138.pub2.