転移した腎がんに対する分子標的薬による治療

レビューの論点

転移した腎がんの患者に対する分子標的薬による治療(分子標的療法)の有効性を比較する。

背景

転移した腎がんは、過去10年間、分子経路に特異的に作用する分子標的薬と呼ばれる薬剤群を用いて治療されてきた。しかし、ここ数年で、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる有望で新しい薬剤群が出現した。免疫系を利用するため、免疫療法とも呼ばれる。現在、このような薬剤を組み合わせて使用することもある。本レビューでは、ある分子標的療法が、別の分子標的療法、免疫チェックポイント阻害薬、またはこれらの薬剤のさまざまな併用療法と比較して、どの程度効果があるのかについて評価する。

研究の特性

どの分子標的薬を投与するかをランダムに決定し、2020年6月18日までに医学論文に報告された研究のみを選択した。ほとんどの研究で、腎がんの増殖(進行と呼ばれる)、生存期間(平均余命)および重篤な有害反応に対する影響について検討していた。

主な結果

レビューの論点に合う研究を18件特定した。これらの研究の対象となったのは、転移がん(身体の他の部位に転移したがん)または手術で切除できなかった進行がんの患者であった。医師や参加した患者にとって最も重要な最新の比較について報告した。

1. パゾパニブ 対 スニチニブ(分子標的薬間の比較)

パゾパニブは、スニチニブと比較して、進行、生存期間および重篤な有害反応について、ほとんどもしくはまったく差がない可能性がある。

2. スニチニブ 対 アベルマブおよびアキシチニブ(分子標的薬と免疫療法薬・分子標的薬の併用療法との比較)

スニチニブは、アベルマブおよびアキシチニブの併用よりもがんが進行する可能性が高いが、死亡や重篤な有害反応についてはほとんどもしくはまったく差がない可能性がある。

3. スニチニブ 対 ペムブロリズマブおよびアキシチニブ(分子標的薬と免疫療法薬・分子標的薬の併用療法との比較)

スニチニブは、ペムブロリズマブおよびアキシチニブの併用よりもがんが進行し、死亡に至る可能性が高いが、重篤な有害反応についてはわずかに減少させる可能性がある。

4. スニチニブ 対 ニボルマブおよびイピリムマブ(分子標的療法と併用免疫療法の比較)

スニチニブは、ニボルマブおよびイピリムマブの併用よりもがんが進行し、重篤な有害反応をもたらす可能性がある。スニチニブは、免疫療法薬の2剤併用と比較して死亡数が多い。

エビデンスの確実性

ほとんどの治療結果に関して、エビデンスの確実性は低いから高いと判断され、このことは、これらの知見に関して不確実性があることを意味している。しかし、転移した腎がん患者の管理にこれらの薬剤をどのように使用すべきかについて、明確な結論を出すためのデータは十分である。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)生田 亜以子 翻訳、榎本 裕(三井記念病院泌尿器科)監訳 [2020.12.04] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012796.pub2》

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