卵巣がんの初回治療でのパクリタキセル投与を週1回にすると、3週に1回よりも生存期間が改善するか

背景
卵巣がんは世界で6番目に多いがんである。治療は外科手術と化学療法(パクリタキセルとカルボプラチンがもっとも一般的)が併用される。併用の目的はがんの再発の確率を減少または再発を遅延させること(無増悪生存期間(PFS)の延長)と、延命(全生存期間(OS)の延長)である。パクリタキセルの投与スケジュール(頻度)が治療効果に与える影響を検討した臨床試験が複数あるが、報告されている結果は相反するものである。

本レビューの目的
卵巣がんの新規診断患者に対するパクリタキセルの投与頻度の差が生存期間に与える影響について、エビデンスのレビューを行った。

研究の特性
エビデンスは2021年11月15日現在のものである。計3,699人が参加した4件の研究をレビュー対象とした。いずれの研究も18歳以上の卵巣がんの新規診断患者を対象としたランダム化比較試験(患者が2群以上の治療群のいずれかにランダムに割り付けられる試験)である。各試験は、カルボプラチンと併用するパクリタキセルについて週1回投与と3週に1回投与を比較している。

主な結果
カルボプラチンと併用するパクリタキセルを3週に1回投与した場合に比べ、週に1回投与した場合、全生存期間にはほとんど差がないものの、無増悪生存期間がわずかに延長する可能性が高いという結果であった(確実性の高いエビデンス)。

有害な作用に関しては、週1回パクリタキセルとカルボプラチンを投与した場合、好中球数(感染防御に関わる白血球の一種)の重度の減少には差がほとんどない可能性が高い(確実性が中等度のエビデンス)一方、重度の貧血は増加する(確実性が高いエビデンス)ことがわかった。重度の神経障害についてはほとんど差がないと思われた(確実性が低いエビデンス)。

結論
卵巣がんの初回治療では、カルボプラチンと併用するパクリタキセルを週1回投与とすると、3週に1回投与よりも無増悪生存期間が延長する可能性が高い。その一方で、全生存期間は改善しない。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)橋本 仁 翻訳、勝俣 範之(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)監訳 [2022.04.04] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012007.pub2》

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