ホルモン受容体陽性乳がんとホルモン受容体陰性乳がんに対するカペシタビンの効果の比較

本レビューの目的

本コクランレビューの目的は、ホルモン受容体陽性乳がんまたはホルモン受容体陰性乳がんのどちらのほうがカペシタビンの有益性が高いのか、また、それががんの進行度によって異なるのかを明らかにすることにあった。この問いに答えるために、関連する全研究を集めて解析した。

本レビューで検討された内容

カペシタビンは、副作用が比較的少ない場合が多く、時には長期にわたり進行乳がんをコントロールすることが可能な錠剤の抗がん剤である。また、早期乳がんの治療後の再発を抑えることを目的とした試験の中には、カペシタビンの追加による軽微な効果をも示唆するものもある。乳がんに対するカペシタビンの用途として、緩和療法(治癒不能な転移または進行がんを対象)、ネオアジュバント療法(術前補助療法、手術前の早期乳がんを対象)、また、アジュバント療法(補助療法、手術後の早期乳がんを対象)を比較した。計26件の試験を見出し、そのうち12件が転移がん、6件がネオアジュバント、8件がアジュバントを検討対象としていた。カペシタビンは、試験によってさまざま使用方法で検討されていたが、次のように分類することができた。単剤療法として、カペシタビン単剤を別の治療(別の単剤である場合が多い)と比較。代替薬として、併用薬物療法に用いられている別の薬剤の代わりにカペシタビンを使用。上乗せとして、1つまたは複数の薬剤を用いた標準治療にカペシタビンを追加。

要点

進行がんに対する検討では、カペシタビンの追加により、がんの増悪までの期間(がんの増殖が抑えられている期間)に軽微な延長がホルモン受容体陽性群で認められ、ホルモン受容体陰性群では認められなかった。一方、延命効果はどちらの群でも認められなかった。しかし、治療計画(レジメン)へのカペシタビンの追加の仕方別で評価すると、他の化学療法に上乗せとして追加した場合が最も効果的であり、増悪までの期間の延長が両群で示され、生存期間の延長がホルモン受容体陽性乳がんで示された。

ネオアジュバント療法での検討では、カペシタビンを含む化学療法レジメンとカペシタビンを含まない化学療法レジメンを比較したところ、差が認められなかった。すなわち、どのホルモン受容体サブグループでも、病理学的完全奏効率(手術時までに乳房のがんの痕跡が治療によって根絶された患者の割合)、無病生存率(術後一定期間が経過した時点で、がん病変のない状態が維持されている人の数)および全生存期間のいずれに対しても、カペシタビンの有意な影響は認められなかった。

アジュバント療法での検討では、患者全体で考察した場合、カペシタビンを含む化学療法レジメンは、カペシタビンを含まない化学療法レジメンと比べて、全生存期間に関してわずかに有利であった。また、トリプルネガティブ(乳がん細胞の表面に、ホルモン受容体であるエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体、そして HER2(ハーツー)タンパクの 3 つがいずれも存在しないタイプの乳がん)およびホルモン受容体陰性乳がんでは、カペシタビンを含む化学療法レジメンは、カペシタビンを含まないレジメンと比べて、がん再発率および乳がんによる死亡の減少が顕著であった。それとは対照的に、ホルモン受容体陽性乳がんでは、がん再発率、がんによる死亡に対するカペシタビンの有意な影響は認められなかった。

カペシタビンの副作用としてよくみられたものは予想通りであり、下痢および手足症候群(発赤、つっぱり、足裏や掌の不快感や疼痛)が最も多かった。

このレビューの更新状況

本レビュー著者らは、2019年6月までに公表された試験を検索した。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本がん医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)八木 佐和子 翻訳、小坂 泰二郎(社会医療法人石川記念会 HITO病院 乳腺外科・化学療法室長)監訳 [2021.06.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD011220.pub2》

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