子宮内膜症に伴う痛みや不妊症に対する腹腔鏡手術

背景

子宮内膜症とは、通常は子宮の内側を覆う組織が、卵巣(卵子が作られる場所)、卵管(卵巣と子宮をつなぐ場所)、骨盤など、子宮腔以外の場所にできる病気である。子宮内膜症は、痛みや不妊、その他にも生活の質を低下させる症状を引き起こす。子宮内膜症にはさまざまな治療法があるが、その一つが腹腔鏡手術である。これは、目に見える子宮内膜症の病変を取り除くために行われる。このコクラン・レビューでは、子宮内膜症がある女性の痛みや不妊症の問題を治療するための腹腔鏡手術に関するエビデンスを評価した。腹腔鏡手術では、病巣を焼くなどして破壊する焼灼術や病巣を切り取る切除術を行う。

研究の特徴

14件の臨床試験(1563人が参加)を対象とした。これらの試験は、オーストラリア、カナダ、エジプト、フランス、イタリア、イラン、イギリスで実施された。ほとんどの試験で、腹腔鏡手術(焼灼術あるいは切除術)と診断目的の腹腔鏡検査を比較していた。対象となった14件の試験のうち、資金源を報告したのはわずか6件であった。エビデンスは2020年4月までのものである。

主な結果

腹腔鏡手術が診断的腹腔鏡検査のみの場合と比較して、全体的な痛みを改善するかどうかは不明であった。残念ながら妊娠後の出生に関するデータはなかったが、腹腔鏡手術は、診断的腹腔鏡検査のみの場合と比較して、子宮内に妊娠する確率を高める可能性があることがわかった。腹腔鏡による切除術が焼灼術に比べて痛みを和らげる効果があるかどうかは不明である。ただし、この結果は1件のみの試験から得られたものである。副作用に関するエビデンスは不十分だったため、安全性に関する結論を出すことはできなかった。

エビデンスの質

腹腔鏡手術の有効性に関するエビデンスの質は、中程度から非常に低いものであった。この分野において追加の研究が必要である。そこでは子宮内膜症特有のエンドポイント(医療従事者、研究者、子宮内膜症の女性によって作成された、核となる評価項目のセット)と有害事象が評価項目として報告されるべきである。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、瀬戸屋希 翻訳[2021.09.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011031.pub3》

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