成人集中治療患者における呼吸補助のための高流量鼻カニュラ

レビューの論点

集中治療室(ICU)で呼吸補助を必要とする成人患者にとって、高流量鼻カニュラ(HFNC)は、有用な治療法か?

背景

ICUに入室している人は呼吸補助を必要とする場合があり、HFNCは呼吸補助の方法の選択肢の一つである。HFNCは、鼻の穴にいれる小さなプラスチックのチューブから加温された酸素を供給する。標準的な酸素療法(常に加温されているわけではなく、プラスチック製のフェイスマスクや鼻腔カニュラから供給される場合もある)よりも、高流量(毎分)で空気が流れる 。他の呼吸補助の方法としては、非侵襲的換気(NIV)や非侵襲的陽圧換気(NIPPV)がある。これは、フェイスマスクや頭全体を覆うヘルメット型のマスクを使い、軽く圧力をかけて空気を肺に送り込む方法である。侵襲的機械的人工換気では、気管に挿入したプラスチック製のチューブを通じて、人工呼吸器を使用して肺に空気を送ることで、最も高いレベルの呼吸補助が可能となる。

検索期間

このエビデンスは2020年4月現在のものである。

研究の特徴

試験の参加者は全員、ICUで呼吸補助を必要とする成人(16歳以上)だった。多くの参加者は呼吸不全(肺が十分量の酸素を血液に供給することが困難な状態)であったり、人工呼吸器を外したばかりで自発呼吸に移行するための支援が必要であった。

参加者をいずれかの試験グループに均等に分類し、最善のエビデンスを提供するランダム化比較試験を検索した。HFNCと標準的酸素療法、NIV、NIPPVを比較した研究を取り込んだ。5136名の参加者が含まれた31の研究と51の進行中の研究、19の分類待ちの研究を対象とした。14の研究は呼吸器の企業から資金援助を受けていた。

主要な結果

標準的酸素療法と比較したHFNC

HFNCを使用することで患者が他の呼吸補助を使用する機会(治療の失敗)を減らす可能性があることがわかった。2つの介入で病院内死亡、ICU滞在期間、肺炎(肺の感染)、顔に触れるチューブやマスクによる肌の損傷、呼吸補助を受ける患者の快適性、血液に供給される酸素供給量については差は見られなかった。

NIV、NIPPVと比較したHFNC

HFNCの使用とNIV・NIPPVの使用との間で治療の失敗に差があるエビデンスは見られなかった。また、病院内死亡、ICU滞在期間、肺炎、圧損傷(体の内外の圧力の差によって生じる損傷)について差がみられるエビデンスは見つからなかった。NIVとNIPPVは血液に供給する酸素量を改善する可能性がある。患者がHFNCを24時間使用することでより快適になるかどうかは不明である。肌の損傷に関する報告はみられなかった。

エビデンスの質

複数の試験のエビデンスの質を決めるために評価尺度を用いた。エビデンスを非常に低い確実性と評価したとき、結果の信頼性は非常に不確かであることを意味する。高い確実性は結果が非常に信頼できることを意味する。

主要な結果において信頼できるだけの十分な数の研究結果が得られないことこともあった。報告不足(例えば、参加者がどのように治療に割付されたか等について報告がされていない)の研究を除外することで、結果が変わることもあった。また、いくつかの結果については複数の研究間で異なる結果がみられた。HFNCが標準的酸素療法と比較した際に病院内死亡、肺炎に影響を与えなかったという結果は中等度の確実性があるが、他の結果に関しては低い、もしくは非常に低い確実性であると判断した。これはこれらの研究結果に関する信頼性は限定的もしくは非常に限定的であるか、真の効果は異なっている可能性があることを意味する。

結論

HFNCは標準的酸素療法と比較した場合、治療の失敗を抑える可能性があるが、NIV、NIPPVと比較した際はおそらくほとんど、もしくは全く違いがないと考えられる。その他のレビューの結果に関しては効果の違いを示すエビデンスは信頼できるものがなかった。しかし、他の51の進行中の試験が確認されており、これらの試験の結果を含めたレビューの将来的な更新を行う予定である。これらの試験が取り入れられたとき、HFNCが成人ICU患者の呼吸補助に役立つかどうか、結論を導く可能性がある。

訳注: 

《実施組織》 増澤祐子 久保田純平 翻訳、井村春樹 監訳[2021.10.13] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD010172.pub3》

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