多発性硬化症における記憶リハビリテーション

レビューの論点

記憶リハビリテーションを受けた多発性硬化症の人たちは、1. 無治療またはプラセボ対照群と比較して、記憶機能の転帰が改善されるか、加えて、2. 日常生活動作、気分、生活の質の点で、無治療群やプラセボ群よりも優れた機能的能力の改善がみられるかに関して検証した。

背景

多発性硬化症(MS)の人は、記憶機能の問題に悩むことが多く、日常生活に支障をきたすことがある。記憶リハビリテーションは、日常生活動作の能力を高め、物忘れを減らすことで自立性を高めるために行われている。このようなリハビリテーションでは、特定の技術や計画を用いて、人が記憶し、定着させ、想起したりしようとする方法を変えることができる。しかし、記憶リハビリテーションが物忘れの軽減や日常生活動作能力の向上に効果があるかどうかは不明である。現在、MSを持つ人々の記憶のリハビリテーションの有効性を調査した質の高い研究はほとんどない。

研究の特徴

このレビューには、さまざまなタイプの記憶再訓練法を用いた989人の参加者を対象とした15件の研究が含まれており、その中にはコンピュータプログラムや日記やカレンダーなどの記憶補助法を用いたものもあった。

主な結果とエビデンスの質

このレビューの結果は、MSの人々が行う記憶リハビリテーションの使用をサポートするためにいくつかのエビデンスを示した。記憶リハビリテーションを受けた参加者は、受けなかった参加者に比べて記憶機能が向上しており、この差は介入終了後とその後しばらくの間認められた。しかし、この評価項目は概ね、抽象的であり、日常生活を反映していない評価で測定された。記憶リハビリテーションを受けた参加者は、生活の質も向上したが、この効果は長期的には維持されなかった。また、記憶リハビリテーションを受けていない人の方が日常生活動作の完成度が高いことがわかったが、この差は小さかった。記憶リハビリテーションを行った群と行わなかった群では、記憶機能の問題や気分の主観的な報告に差はなかった。レビューの根拠となる質の高い研究は依然として少数であり、より多くの質の高い研究が必要とされる。

訳注: 

《実施組織》冨成麻帆、 阪野正大 翻訳[2020.11.18]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008754.pub3》

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