嚢胞性線維症におけるビタミンK補充

レビューの論点

嚢胞性線維症患者におけるビタミンKの補充が患者の血液凝固、骨強化、QOLに対するビタミンK欠乏の影響を弱めるかどうか検討する科学的根拠(エビデンス)を評価した。この欠乏を予防するのに最適な摂取量を決定するよう試みた。これは以前に発表されたレビューのアップデート版である。

背景

嚢胞性線維症は遺伝性疾患で、特に肺、消化管、膵臓に顕著な病変が認められる。嚢胞性線維症患者の膵臓は、しばしば消化された食物を適切に吸収できるのに十分な酵素を産生できないが、これはおそらくビタミンKのような脂溶性ビタミンの欠乏と関係がある可能性がある。ビタミンKは適切な血液凝固、骨形成およびある種の代謝機能にとって必要である。

検索期間

本エビデンスは2019年8月12日現在のものである。

研究の特性

本レビューには、3件の試験(8~46歳の参加者計70人)を組み入れた。

そのうち2件がビタミンKを対照群(無摂取)と比較していた。1件目の試験では、参加者18人(13~35歳)にビタミンKを5 mgの用量で1週間に1回経口摂取もしくは無摂取を1カ月間行い、その後もう1カ月間は他群に変更し行った。残念ながら、この試験データは試験医師が試験当初からのデータを記録していなかったため(参加者全員が両群に割り付けられた試験終了時のみ)、解析不可能であったので効果が摂取によるものか無摂取によるものかどうか判別不可能であった。2件目の試験には、16歳から45歳の計38人が参加した。参加者はビタミンK 10 mgまたはプラセボ(ビタミンKを一切含まない偽サプリメント)のいずれかを12カ月間毎日摂取した。ただし、試験医師が各群の人数を記載しなかったため、結果を解析することはできなかった。

3件目の試験では、参加者(8~18歳の小児14人)にビタミンKを経口摂取した。参加者の半数は1 mg用量を毎日、残りの半数は5 mgを毎日、1カ月間摂取した。

主な結果

本レビューの主要評価項目である血液凝固と生活の質(quality of life:QOL)および副次評価項目の栄養と有害事象に関して、いずれの比較についても報告している試験はなかった。

ビタミンK と対照群(無摂取)の比較

12カ月間の試験のみが、主要評価項目として骨形成について報告していた。腰部または股関節の骨密度に対してビタミンK補充による効果があるかどうかはきわめて不確かである(非常に質の低いエビデンス)。両試験とも血中ビタミンK値の上昇および低カルボキシル化オステオカルシン値(股関節骨折リスクの指標)の低下を報告していた。また、4週間の試験でも、ビタミンK依存性凝固因子(PIVKA)値が低下して正常値に戻ったことを報告していたが、エビデンスの質が非常に低いため、それがビタミンK補充によるものかどうかは定かではない。

ビタミンKの高用量と低用量の比較

この試験では、ビタミンK値は改善したものの、高用量群と低用量群の間に差はないと考えられると報告されていた。また、低カルボキシル化オステオカルシン値にも差がないようであった(非常に質の低いエビデンス)。

エビデンスの質

全体的なエビデンスの質は、全試験のデザインにみられるバイアスのリスクと参加者数の少なさのため、非常に低いと判断された。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD008482.pub6》

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