帝王切開における脊髄・硬膜外併用麻酔と脊髄麻酔との比較

論点

局所の神経ブロックは、帝王切開を受ける時の麻酔方法の一つである。2つの異なる方法が用いられている。脊髄麻酔(クモ膜下麻酔)では、脊椎下部(腰のあたり)に局所麻酔薬を1回注入する。脊髄麻酔と硬膜外ブロックを併用する方法では、より太い針を使用し、脊椎下部に細いカテーテルを挿入する。このレビューでは、帝王切開を受ける女性とその赤ちゃんに対する、これら2つの局所の神経ブロックの相対的な利点とリスクを調べた。

重要である理由

帝王切開のために行う脊髄麻酔は、比較的簡単に実行でき、麻酔効果がすばやく現れる。薬液を単回注入するだけなので、麻酔期間を延長するにはもう一度脊髄麻酔を行わなくてはならない。ブロックが急激に効果を示すため、低血圧、吐き気や嘔吐などの有害作用を引き起こす可能性がある。局所麻酔薬の投与量を減らすと、これらの有害事象が減少し、筋肉機能の回復(麻酔が切れる)が速くなるかもしれない。このレビューでは、高用量と低用量の脊髄麻酔を個別に検討した。

脊髄・硬膜外併用麻酔(CSE)を用いると、硬膜外カテーテルを挿入することで、脊椎麻酔の薬液量を減らし、硬膜外カテーテルを介した麻酔の追加投与が可能になる。脊髄硬膜外麻酔は通常、麻酔効果が表れるまでに時間がかかるが、単発の脊髄麻酔に見られる悪影響の一部を回避できる可能性がある。麻酔薬を追加できれば、最初に行った局所神経ブロックが手術に十分でない場合に、全身麻酔または鎮静の必要性を減らすことができる。硬膜外カテーテルは、手術後の鎮痛剤を投与するためにも使用できる。

得られたエビデンス

エビデンスを検索し(2019年8月8日)、高用量または低用量の脊髄麻酔と脊髄・硬膜外併用麻酔(CSE)を比較する18件のランダム化比較試験(対象者は1272人の女性)を特定した。しかし、我々が行った解析の多くにおいて、それより少ない数の研究と女性を含むにとどまった。2件の試験のデータは、このレビューに寄与しなかった。

初回の麻酔で十分な麻酔効果が得られなかったために、再度麻酔を行うか全身麻酔を必要とする女性の数は、CSEと高用量の脊髄麻酔の間にほとんどまたはまったく違いがないかもしれない。追加の術中鎮痛または全身麻酔への変換の必要性について、CSEと脊髄麻酔で違いが生じるかは不明である。また、神経ブロックのタイプに関係なく、麻酔に満足した女性の人数に関する結果についても不確かである。CSEを受けた女性(21人中13人)の方が、高用量の脊髄麻酔を受けた女性(21人中6人)よりも、治療を必要とするような手術中の吐き気や嘔吐があった。硬膜穿刺に伴う術後の頭痛を認めた女性の人数は、グループ間で同低度であった(CSEでは56人中5人、脊髄麻酔では57人中6人。113人の女性が対象となった計3件の研究からのデータ)。また、治療を必要とする程度の術中低血圧も同様であった(162の女性が対象となった4件の研究)。

初回の麻酔で十分な麻酔効果が得られなかったために、再度麻酔を行うか全身麻酔を必要とする女性の数は、CSEと低用量の脊髄麻酔の間にほとんど、またはまったく違いがないかもしれない(224人の女性を対象にした3件の研究)。追加の術中鎮痛の必要性の違いは、恐らくほとんどないかまったくない(4件の研究、対象は298人の女性)。CSEまたは低用量脊髄麻酔が、術中に全身麻酔に変更する必要性に及ぼす影響については不明である(3件の研究、対象は222人の女性)。麻酔に対する女性の満足度を調べた研究はなかった。麻酔効果が得られるまでの平均時間は、CSEと比較して低用量の脊髄麻酔の方が速かったが、そのわずかなに臨床的な意味があるとは考えられない(2件の研究、対象は160人の女性)。CSEは、低用量の脊髄麻酔と比較して、治療を必要とする術中低血圧の頻度を減らすようである(4件の研究、対象は336人の女性)。CSEと低用量の脊髄麻酔の両群において、治療を必要とする術中の吐き気や嘔吐があった女性の人数は同様であった(CSEで50人中3人、低用量脊髄麻酔で50人中6人。100人の女性を対象にした1件の研究)。硬膜後の穿刺頭痛は認めなかった(1件の研究、対象は138人の女性)。

母体に使用した麻酔方法に関係なく、すべての赤ちゃんは出生時に健康であった(アプガースコアで評価、242人の赤ちゃんを対象にした5件の研究)。

意味するもの

現在、一方の麻酔法をもう一方の麻酔法よりも支持するエビデンスは不十分である。我々のほとんどの解析で、含めた研究数および対象者数が少なく、一部の研究にはデザイン上の限界があった。帝王切開に対する、CSEと脊椎麻酔単独の相対的有効性と安全性をさらに評価するには、より多くの研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 増澤祐子 翻訳[2020.05.03] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD008100.pub2》

Tools
Information
Share/Save