慢性原発閉塞隅角症(目の病気)に対するレーザー周辺部虹彩形成術(手術法)のメリットとリスクは?

なぜこの問題が重要なのか?
原発閉塞隅角症(PAC)とは、虹彩(目の色のついた部分)が排水路を塞いでいるために、目からの排水がうまくいかない状態のことである。閉塞は突然起こる場合(急性PAC)とゆっくり起こる場合(慢性PAC)がある。排水路が閉塞すると眼球内に液体が溜まって圧力が上昇し、視神経を損傷して視力の一部または全部が失われる可能性がある。

PACの主な治療法は、レーザーによる周辺虹彩切開術と呼ばれる手術方法である。周辺虹彩切開術は、レーザーで虹彩に穴を開け、液体が排出されるようにする方法である。しかし、3人に1人以上は、周辺虹彩切開術では排液が改善されないと言われている。周辺虹彩切開術に代わる方法として、レーザーで虹彩の形を整え、排液を妨げないようにするレーザー周辺虹彩形成術(LPIp)がある。

LPIpが慢性的なPACの患者さんにどの程度効果があるのかを知るために、研究のエビデンスを検討した。

どのようにエビデンスを特定し、評価したか?
まず、LPIpの効果を他の治療法または無治療と比較した研究を医学文献で検索した。その後、結果を比較し、すべての研究のエビデンスをまとめた。最後に、研究方法や規模、そして研究間の結果の一貫性などに基づいて、エビデンスの確実性を評価した。

レビューの結果
その結果、アジアを中心とした計252人を対象とした4件の研究が見つかった。これらの研究では、参加者を3か月から12か月間追跡調査し、比較した。

- 一次治療として、LPIp+周辺虹彩切開術と周辺虹彩切開術単独を比較した場合(つまり、これまでPACに対して他の治療を受けたことがない人)。

- 二次治療として、LPIp と無治療の比較(つまり、LPIp ではなく PAC の治療を受けたことがある人の場合)。

- 二次治療として、LPIpと点眼薬(トラボプロスト0.004%)の比較。

一次治療として、LPIp+周辺虹彩切開術を周辺虹彩切開術単独と比較した場合

周辺虹彩切開術にLPIpを追加しても、ほとんど差がない可能性があることを示すエビデンスがある。

- 眼圧(2件の研究、174人)。

- 12か月後の薬の必要性(1県の研究、126人)。

- さらなるレーザー治療や外科的治療の必要性(1県の研究、126人);および

- 前眼部の形(1件の研究、48人)。

2件の研究によって提供されたエビデンスは、以下の項目を示唆する:

- 副作用(前眼部の出血など)はまれである。

- 周辺虹彩切開術にLPIpを追加しても、望ましくない事象の発生頻度にほとんど差がない可能性がある。

周辺虹彩切開術にLPIpを追加することで、病気の進行が遅くなるか、生活の質(QOL)が向上するかは、調査した研究がないため、わからない。

二次治療として、LPIpを無治療と比較した場合

22人を対象に、LPIpと無治療の効果を比較した研究が1件見つかった。

- 眼圧、および

- 前眼部の形。

この研究は、どちらの治療法が優れているかを判断するのに十分なほど強固なものではなかった。

以下の項目に関して、LPIpが無治療よりも優れているかどうかは調査していない:

- 病気の進行を遅らせる。

- 薬の必要性を制限する。

- レーザー治療や外科的治療の必要性を回避する、または

- QOLを向上させる。

なお、本試験では、望ましくない事象については調査していない。

二次治療として、LPIpとトラボプロスト0.004%点眼液の比較

80人を対象とした1件の研究からのエビデンスは、以下の項目に関してLPIpとトラボプロスト0.004%の効果にほとんど差がない可能性を示唆している:

- 病気の進行

- 眼圧、および

- 12ヶ月後の薬の必要性、および

- レーザー治療や外科的治療の必要性。

さらに、エビデンスは以下の項目を示唆する:

- 副作用はまれである。

- 2つの治療法の間で望ましくない事象の発生頻度にほとんど差がない可能性がある。

治療法が前眼部の形に異なる影響を与えるかどうかを判断するには、十分なエビデンスがなかった。

QOLを向上させるために、どの治療がより効果的であるかは、調査した研究がないため、わからない。

結果が意味すること
エビデンスとして分かったことは以下の通りである:

- LPIpは、慢性PACの他の治療法よりも優れていない可能性がある。

- LPIpは、慢性的なPACの治療と同様に、望ましくない事象が発生する可能性がある。

このレビューの更新状況
このコクラン・レビューに掲載されているエビデンスは、2020年12月までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2022.03.28]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006746.pub4》

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