早産児や低出生体重児での動脈管開存症予防に対するイブプロフェン

レビューの論点イブプロフェンの予防的投与はプラセボ、非介入あるいはインドメタシンと比較して、早産児の動脈管開存症の予防に有効で安全か?

背景動脈管開存症(PDA)は、より早期に産まれた早産児(未熟児)や非常に小さな赤ちゃんに一般的な合併症である。動脈管は胎児の肺から身体に血液を流す管である。通常出生後に閉鎖するが、時には赤ちゃんの発達が未熟であるために開いたままになることがあり、これは生命を脅かす合併症につながる可能性がある。インドメタシンは、PDAを閉鎖させる効果があるが、深刻な副作用を引き起こす可能性もある。もう一つの選択肢は、PDAに対し予防的に投与するイブプロフェンである。

試験の特性1000人以上の乳児がPDAの予防のためのイブプロフェンの臨床経験に登録されていた。ほとんどの試験のサンプルサイズ(訳者注;対象者の人数)が小さかった。

主要な結果イブプロフェンの予防的使用は、動脈管開存(PDA)の発症率、他の薬物による追加治療の必要性、または外科的閉鎖の必要性を減少させる。イブプロフェン投与群の副作用では、プラセボまたは介入なしのグループと比較して腎臓の合併症リスク有意な増加が認められた。イブプロフェンの使用により、消化管出血のリスクが増加した。グレードII~IVの脳室内出血(脳内に出血すること)のリスク減少はかろうじて有意であったが、死亡率、生後28日または修正36週時点での慢性肺疾患、壊死性腸炎、授乳量が必要量に達する(輸液を必要としなくなる)までの期間には有意な差を認めなかった。対照群では、PDAは新生児の58%で3日目または4日目までに自然に閉鎖していた。したがって、予防的治療は、アウトカムとして重要である短期的なメリットがないにもかかわらず、多くの乳児を重大な副作用を有する薬物に不必要にさらすことになる。なお、長期的なフォローアップ研究は発表されていない。現在のエビデンスでは、PDA予防のためのイブプロフェンの使用を推奨していない。PDA管理の新しいアプローチとして、生後72時間以内の心臓の超音波画像による基準に基づいた、早期から対象を絞った治療がある。これによると、自然に閉鎖する可能性が低いPDAを高い感度で診断することができる。この方法を用いた試験が、現在、世界の多くの地域で進行中である。

エビデンスの質この更新されたレビューでは、イブプロフェンはPDAを防ぐことができるが、他の短期的、長期的な利益を与えないことを明らかにした。エビデンスの質は、低度のものから高度までばらつきがあった。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子 翻訳、杉山伸子 監訳[2020.01.17]
《注意》本レビューはこの日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
《CD004213.pub4》

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