嚢胞性線維症患者における骨粗鬆症に対するビスフォスフォネート製剤

レビューの論点

経口投与(口から飲む)または静脈内投与(静脈に直接投与)のビスフォスフォネート(骨量の減少を防ぐ薬)は、嚢胞性線維症(CF)の人の骨粗鬆症に対してどのような効果があるか。

背景

嚢胞性線維症は、全身の多くの臓器(肺や膵臓など)に影響を及ぼす重篤な遺伝性疾患である。CF患者の約23.5%は、一般に骨粗鬆症と呼ばれる骨密度(BMD)の減少を経験しており、骨折の可能性を高めている。骨折(例 . 肋骨や脊椎など)の短期および長期の影響により、肺疾患が悪化し、入院がより頻繁になる可能性がある。ビスフォスフォネートは、骨が吸収される速度を遅くすることによって、BMDを増加させる薬である。更年期障害や副腎皮質ホルモン剤の使用による骨粗鬆症の治療に使用される。ビスフォスフォネートがCF患者の骨折の頻度、BMD、生活の質(QOL)に影響を与えるかどうか、また、副作用があるかどうかを知りたかった。このレビューは以前のコクランレビューをアップデートしたものである。

検索日

エビデンスは2022年5月10日までのものである。

研究の特徴

成人272人、小児113人(5歳から18歳)を対象とした6か月から2年間の9件の試験を対象とした。8件の試験には肺移植を受けていない成人238人が参加し、そのうち3件の試験ではビスフォスフォネートを静脈内投与し(1件はパミドロネート、2件はゾレドロネート)、5件の試験ではビスフォスフォネートを経口投与した(リセドロネート1件、アレンドロネート4件)。試験では、ビスフォスフォネートとプラセボ(活性のない薬剤)またはカルシウム(ビタミンDを追加したものとしないもの)が比較された。この8件の試験のうち、アレンドロネートの経口剤とプラセボを比較した1件の試験には113人の子供が含まれており、その結果を別々に分析した。肺移植を受けた成人34人を対象とした最後の試験では、パミドロネート静脈注射とビスフォスフォネート無治療が比較された。

主な結果

ビスフォスフォネートは、成人の腰椎と股関節のBMDを一貫して増加させた。また、小児では腰椎のBMDを増加させた。ビスフォスフォネートによる治療は、成人および小児における骨折(脊椎またはその他の部位)および死亡の割合を減少させないようである。しかし、これは参加人数が少ないことと、試験期間が短いことが関係していると思われる。ビスフォスフォネートの静脈内投与は、特に副腎皮質ホルモンを使用していない人において、激しい骨の痛みとインフルエンザのような症状をよく起こした。副腎皮質ホルモンによる前処置の効果を評価するために、さらなる研究が必要である。より強力な薬剤であるゾレドロン酸で骨の痛みがより一般的か、より深刻か(あるいはその両方)、また、コルチコステロイドがこれらの有害事象を軽減または防止するかどうかについては、さらなる試験が必要である。また、ビスフォスフォネートの経口剤に関連する胃や消化管における有害作用についても、追加試験を実施する必要がある。ビスフォスフォネートが骨折率と生存率にどのように影響するかを示すためには、より多くの参加者とより長い追跡調査が必要である。嚢胞性線維症の子どもたちを含むより多くの臨床試験を実施し、これらの薬剤の効果、利点、害をよりよく理解する必要がある。

肺移植を受けていないCF患者におけるビスフォスフォネートの対照薬との比較

大人

5件の試験(142人)では、12か月後の新たな椎体骨折や非椎体骨折について治療群と対照群の間に差がなく、2件の試験(44人)では24か月後に骨折がなかったと報告されている。12か月後では、6件の試験(171人)の結果、ビスフォスフォネートは腰椎のBMDを増加させる可能性があり、5件の試験(155人)では股関節または大腿骨のBMDに同じ効果があると報告されている。12か月後のQoLスコアに明確な差はなかったが、7件の試験(206人)で報告されたように、ビスフォスフォネートはおそらく12か月後の骨痛をより強くしていた。

子ども

12か月後、新たな椎体骨折や非椎体骨折について、治療薬とプラセボとの間に差は認められなかった。ビスフォスフォネートは、12か月後の腰椎のBMDを増加させる可能性がある。骨や筋肉の痛み、発熱、胃腸の副作用に差はなかった。股関節/大腿骨におけるBMDの測定やQOLの報告は行われていない。

肺移植を受けたCF患者におけるビスフォスフォネートの対照薬との比較

この試験では、24か月後の結果しか報告されていない。椎体、非椎体ともに骨折の数に差はなかったが、腰椎と大腿骨では治療によりBMDが増加した。どちらのグループでも、骨の痛みと発熱を報告した人はいなかった。本試験ではQOLは測定していない。

エビデンスの確実性

エビデンスの確実性はまちまちで、すべての試験でバイアスのさまざまな側面について懸念があった。少なくとも3件の試験には、製薬会社から部分的に資金が提供されていた。ある臨床試験では、骨シンチレーションを見て報告する人が、どの参加者がビスフォスフォネートで治療されているかを知っていたかもしれない。この知識が、それらの人々の客観性に影響を与えたかもしれない。2件の試験では骨折の報告がなかったが、これらがレビューの結果を大きく変えたとは考えにくい。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2023.02.07]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002010.pub5》

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