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第一選択療法が無効であったか、再発した妊娠性絨毛性腫瘍(GTN)に対する抗癌剤治療

このレビューは、第一選択療法が無効であったか、再発したGTNに対する抗癌剤治療に関するものである。GTNとは妊娠(多くは胞状奇胎妊娠)の後に胎盤組織から発生する癌の一種である。胞状奇胎は子宮内で胎盤組織が異常増殖した良性疾患である。多くは子宮内容の除去(手術)で治癒するが、最大20%の確率で悪性化する。GTNは通常抗癌剤(化学療法)に非常に良く反応するが、これらの薬剤は毒性があるため、治療の目的は最小限の副作用で治療を達成することとなる。医師がGTNの女性に最適な治療法を選択するために、この疾患は特有のリスク因子に応じて低リスクと高リスクに分類されている。

低リスクGTNの化学療法は通常単剤で行われ、高リスクの腫瘍は複数の薬剤を組み合わせて治療される。もっとも一般的な組み合わせは5つの薬剤からなり、EMA/COと略される。医師は、血液中の妊娠ホルモン(hCG)濃度を測定することで治療への反応性を評価する。化学療法が効かないと判断された場合は、代替治療(サルベージ療法)を開始しなければならない。これは25%の症例に必要となり、様々な薬剤の組み合わせが使用されている。

さまざまなサルベージ療法の組み合わせにおいて、どれが最も効果的で最も毒性が低いのか不明であったためにこのレビューを行った。2015年11月までの関連する全ての文献を検索した。残念ながら、異なる種類のサルベージ療法を比較した質の高い研究は見つけられなかった。これは、いくつかの抗癌剤の組み合わせによる治療で高確率で治癒するということと疾患自体が希少なために大規模な研究への参加が困難であるということに起因している。これらの薬剤の組み合わせが効果的であるか、副作用があるかについて結論づけることはできなかった。この分野の研究者が協力して重要なエビデンスをもたらすことに期待している。

訳注

《実施組織》 内藤未帆、杉山伸子 翻訳 [2021.11.01] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008891.pub3》

Citation
Alazzam M, Tidy J, Osborne R, Coleman R, Hancock BW, Lawrie TA. Chemotherapy for resistant or recurrent gestational trophoblastic neoplasia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 1. Art. No.: CD008891. DOI: 10.1002/14651858.CD008891.pub3.