通常の食塩の代わりに低ナトリウム食塩代替物(LSSS)を使用することは、血圧や心臓病のリスクを低減し、かつ安全か?

要点

• 成人の場合、通常の食塩の代わりにLSSSを食物に使用すると、多分血圧がわずかに下がるだろう。成人で通常の食塩の代わりにLSSSを使用すると、脳卒中や突発的な冠動脈血流低下のような非致命的な心血管病、あるいは心臓病死のリスクがわずかに低くなるだろう。

• 成人で通常の食塩の代わりにLSSSを使用すると、血中カリウム(心拍を整脈に保つためのミネラル)の濃度がわずかに上昇する。これは、体内のカリウムを効率的に調整することができない人にとっては有害となる可能性がある。その他の安全性に関するエビデンスは非常に限られている。

• 小児の場合、通常の食塩の代わりにLSSSを使用した血圧への影響やその安全性については明らかではない。

• このエビデンスは、腎臓に異常がある、あるいは特定の薬を服用している人のように、血中カリウム濃度が高くなるリスクがあるとされている人には、すぐには適用できないかも知れない。

低ナトリウム食塩代替物(LSSS)とは何か?

LSSSとは、通常の食塩よりもナトリウムを減らした製品のことである。ナトリウムの一部をカリウムや他のミネラルに置き換えることで、LSSSのナトリウム量が減らされている。ナトリウムの摂取量が多く、カリウムの摂取量が不十分であると血圧が高くなるため、LSSSは通常の食塩の摂取によるリスクを減らすことができるだろう。世界的に高血圧は、主に脳卒中、急性冠症候群(ACS:心臓への血流が減少する状態)、および腎臓障害を引き起こし、予防可能とされる死亡の最大の原因である。

しかし、LSSSにはまた潜在的な健康リスクもある。LSSSを使用すると、血液中のカリウム濃度が通常の濃度よりも高くなり(高カリウム血症)、心拍数やリズムに問題を起こし、場合によっては心臓が停止したりする。このようなリスクは、例えば腎臓が適切にカリウムを排泄しない人、特定の人においてより大きい。

何を調べようとしたのか?

通常の食塩の代わりにLSSSを使用することの、発病(脳卒中、ACS)および心血管病死はもちろん、血圧に及ぼす効果について調べたかった。また、一般人や高カリウム血症のリスクがある人の両者において、通常の食塩の代わりにLSSSを使用した場合に安全かどうかも調査したかった。

成人、小児、妊婦に対する影響について調べたかった。

何を行ったのか?
LSSSと通常の食塩を使用した結果を比較した研究を探すために、5つの電子データベースと臨床試験登録データを検索した。研究方法や研究規模のような要因に基づいて、統合するエビデンスにおいて結果を比較・要約し、信頼性について評価した。

何がわかったのか?

成人34,961名と、小児92名を対象とした26件の研究*が見つかった。妊婦を対象とした研究は見つからなかった。ほとんどの研究は田舎または郊外で実施され、半数以上が低または中所得国で行われたものだった。ほとんどの研究には高血圧の人が含まれており(22件)、最も規模の大きい研究では、脳卒中リスクが高い人のみが対象とされた。7件の研究では、高カリウム血症リスクの可能性がある人が対象とされた。すべての研究において、腎臓疾患のある人あるいは特定の薬を服用している人のように、カリウム大量摂取が危険であることがわかっている人は対象から除外されていた。ほぼすべての研究(23件)において、ナトリウムの一部がカリウムに置換されたLSSSを使用した。研究で使用された様々なLSSSにおいて、置換されたナトリウムの割合は、非常に少ないもの(3%)から多いもの(77%)まであった。

*研究は、参加者を2つ以上の治療集団群に無作為に割り当てる研究デザインである。これは、参加者集団の同一性を担保する最良の方法である。

主な結果

成人の場合、LSSSは通常の食塩と比較して、血圧(拡張期および収縮期)を多分わずかに低下させるだろう。また、LSSSは通常の食塩と比べて、非致死的脳卒中、非致死的ACS、および心血管病死のリスクも多分わずかに低下させるだろう。

しかし、通常の食塩に代わるLSSSの使用は、血中のカリウム濃度が多分またわずかに上昇するだろう。

高血圧や高カリウム血症において、通常の食塩と比較してLSSSはほとんど差がないかも知れない。

血圧管理、各種の心臓病発症、脳卒中による死亡、血中のカリウム濃度低下(低カリウム血症)、およびその他の有害事象に関するLSSSの効果については、結論を出すことができなかった。

小児において、通常食塩の代わりにLSSSを使用することの効果や安全性については、結論を出すことができなかった。

このエビデンスの限界は何か?

エビデンスの信頼性は中等度と判断した。信頼性が低下した主な原因としては、いくつかの研究における実施方法と、その結果が一般人にも適用可能かどうかについて、懸念が残ったためであった。小児、妊婦、高カリウム血症リスクがある人、あるいは高血圧でない人に対するLSSSの効果や安全性については、定かではなかった。また、家庭で調理されない食品にLSSSが使用された場合の効果についても不明である。今後の研究により、これらの結論は変わる可能性がある。

このエビデンスはいつまでのものか?

2021年8月時点で更新されたエビデンスである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠 翻訳、星進悦 監訳[2022.09.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015207》

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