磁気共鳴画像(MRI)検査で肝臓癌を発見する精度は?

要点

慢性肝疾患の患者に関して、磁気共鳴画像(MRI:体内を横断的にスキャンする)により、16%の人が肝臓癌を見落とされ適時適切な治療を受けられない可能性があり、6%の人が肝臓癌を誤って発見され不必要な治療を受ける可能性がある。

MRIにより、肝臓の一部を切除する手術を受ける可能性のある肝臓癌患者の16%が、おそらく肝臓癌を見逃され、肝臓の一部を切除する手術を受ける必要のない患者の7%が、肝臓癌を誤って発見されてしまう。

これらの研究は、バイアスのリスクが高く、また、互いにあまりにも異なるため、エビデンスに基づく確固とした結論を導き出すことはできなかった。

なぜ、肝臓癌を正確に診断することが重要か?

肝臓癌、すなわち「肝細胞癌」は、原因に関係なく、ほとんどが慢性肝疾患の人に発生する。世界で6番目に多い癌であり、癌による死亡原因の3番目に多い癌である。初期症状は肝臓の病気と似ているため、診断が難しい。血液検査や超音波検査の結果、肝臓癌が疑われる人は、肝臓の画像を作成するスキャンや、肝臓の一部を取り出して調べる生検など、さらなる検査を受けることができる。肝臓癌が早期に発見された場合、肝臓の一部を切除する手術(肝切除術という)や肝移植による治療が行われることがある。肝臓癌がさらに進行している場合は、化学療法が必要になることもある。肝臓癌を診断検査で見逃すと、適切な治療が受けられなくなる。しかし、肝臓癌がないのに誤って診断してしまうと、不必要な検査や治療を受けてしまうことになる。

磁気共鳴画像装置(MRI)とはどのようなもので、どのように肝臓癌を診断するか?

MRIは、体内の骨、血管、組織などの断面(スライス)を画像化するものである。画像は、信号の強弱をコンピュータで指示し、合成したものである。MRI検査は、肝臓に癌の可能性のある異常の存在を発見することができる。現在のガイドラインでは、肝臓癌の可能性がある人の肝臓癌の有無を確認するために、MRIまたは別の種類の画像診断、コンピュータ断層撮影、またはその組み合わせのいずれかを使用することを推奨している。

何を知りたかったのか?

MRIが慢性肝疾患の成人の肝臓癌を診断するのに十分な精度を持つかどうかを調べたいと考えた。まず、大きさや病期を問わず、切除に適した肝臓癌に関心を持った。

このレビューで行ったことは何か?

慢性肝疾患のある成人の肝癌を確認するために、MRI検査の精度を、利用可能な最善の検査と比較して評価した研究を検索した。最も有効な検査は、肝臓、または肝臓の一部を顕微鏡で調べることである。

レビューの結果

4,841人の参加者を対象とした、34件の研究が見つかった。

慢性肝疾患の成人1,000人のうち約560人(56%)が肝癌と確認された。この1,000人のうち、MRIはおそらく:

- 473人の肝臓癌を正しく検出する

- 87人の肝臓癌を見逃す

- 癌でない27人の肝臓癌と誤って検出してしまう

- 413人が肝臓癌ではないことを正しく検出する。

この研究によると、慢性肝疾患の成人1,000人のうち約560人(56%)が切除可能な肝がんであることが確認された。この1,000人のうち、MRIはおそらく:

- 472人の切除可能な肝臓癌を正しく検出する

- 88人の切除可能な肝臓癌を見逃す

- 31人の切除可能な肝臓癌と誤って検出してしまう

- 409人に切除可能な肝臓癌がないことを正しく検出する。

エビデンスの限界は?

これらの研究では、研究参加者を選択する方法が異なり、肝疾患の有無の定義も異なるため、エビデンスに対する信頼性は限られている。つまり、MRI検査は、今回のエビデンスで示唆されたよりも正確である可能性もあるし、そうでない可能性もある。

このレビューの更新状況

エビデンスは2021年11月9日までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2022.05.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014798.pub2》

Tools
Information