統合失調症患者に対する抗精神病薬の減量

要点

- 抗精神病薬の数を減らすと、薬効が無くなるなどの理由で早期に試験から離脱する参加者が増える可能性がある。

- 研究数や参加者の数が少ないため、確実な結論を出すことはできない。

背景

統合失調症は深刻な精神疾患である。この病気の人は、自分の考えや信念、思いと現実を区別するのに苦労している。例えば、頭の中で声が聞こえていても、本当に誰かに話しかけられているように感じられることがある。 主に抗精神病薬と呼ばれる薬で治療する。統合失調症の患者には、効果的な治療を実現するために、複数の抗精神病薬による治療が提供されることがよくある。抗精神病薬の使用は副作用と関係があり、異なる抗精神病薬が相互に作用して副作用を悪化させる可能性がある。

知りたかったこと

抗精神病薬の数を減らすことが、同じ数の抗精神病薬を使い続けることと比較して、以下の指標を改善するかどうかを調べたかった:

- 生活の質(QOL)

- 再入院者数

- 副作用により早期に試験を終了した人の数

- 日常生活動作

- 再発

- あらゆる理由による早期に試験を終了した人の数

- 副作用が1つでもある人の数

実施したこと

統合失調症患者において、抗精神病薬の数を減らすことと、同じ数の抗精神病薬を維持することを比較検討した研究を検索した。

研究方法や研究規模のような要因に基づいて、研究結果を比較し、要約し、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

その結果、319人の統合失調症患者を対象とした5件の研究が見つかった。研究の継続期間は、3か月から1年間であった。カナダ、日本、フィンランドで1件ずつの研究が、また、米国で2件の研究が実施され、いずれも公的機関がスポンサーとなっていた。

抗精神病薬の数を減らすと、特に治療がうまくいかず、早期に研究を離脱する参加者が増える可能性があることがわかった。

再入院、副作用による早期離脱、機能、少なくとも1つの副作用を持つ参加者の数については差がなかったが、結果については非常に不確かなものである。

生活の質(QOL)や再発に関するデータは見つからなかった。

エビデンスの限界は?

対象者がどのような治療を受けたかを認識していた可能性があるため、エビデンスとしてはあまり確信がない。また、すべての研究が、私たちが関心を持っているすべてのことについてデータを提供しているわけではない。さらに、結果を確信できるほど十分な数の研究がなく、研究ごとのサンプル数も小規模であった。

本レビューの更新状況

エビデンスは2021年2月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳 [2022.10.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014383.pub2》

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