マインドフルネスによる医学生および若手医師の精神的健康状態(ウェルビーイング)の改善

なぜこのレビューが重要なのか?

医療の専門職は、そのやりがいと過酷さが認識されている。医学生や若手医師は、研修期間中に個人的・職業的なストレス要因が増加することが知られている。その結果、彼らの精神的健康(ウェルビーイング)への負担は大きくなる。医学生や若手医師の精神的な健康をサポートすることは、彼らの健康全般のバランスを確保し、また患者のケアや患者の安全という彼らの責務を支援するために、重要である。さらに、医学生や若手医師は時間に余裕がないことが多い。したがって、マインドフルネス(今の心に意識を向けること)がその時間的な拘束を正当化できるほど効果的な介入であるかどうかを検証することが重要である。今回の対象者に対するマインドフルネスを検証したコクランレビューは、これまでなかった。

このレビューに関心をもつ人は誰なのか?

医学生や若手医師、研修レベルや専門性の異なる他の医療従事者、医学生の教育や研修に携わる大学や病院などの機関である。

このレビューでわかることは何か?

マインドフルネスに基づく心理的介入は、医学生や若手医師の精神的健康状態にどのような効果をもたらすか?

このレビューにはどのような研究が含まれたか?

2021年10月までに発表された、医学生と若手医師を対象としたマインドフルネスに関するすべての研究をデータベースで検索した。本レビューでは、ランダム化比較試験(参加者を無作為にグループに割り当てるタイプの試験)を対象にした。また、対象者は全ての学年の医学生または、卒後1年、2年または3年の若手医師とした。参加者の年齢、国籍、既往による研究の除外は行わなかった。10件の研究、合計731名の参加者を解析の対象とした。

レビューの結果、どのようなことがわかったのか?

全体として、マインドフルネスに基づく介入が不安やうつ症状に対して効果があるというエビデンスは見つからなかった。しかし、マインドフルネスに基づく介入は、ストレスに対してわずかな良い効果を、またバーンアウト(燃え尽き症候群)に対しては境界線レベル(効果があるかないか微妙なレベル)の良い効果を持つようであった。マインドフルネスに基づく介入が意図的な自傷行為、自殺念慮、自殺行動に影響を与えるかどうかは、これらの結果を検証した研究がなかったため、報告できなかった。最後に、多くの研究が参加者の長期的な追跡調査をしていなかったため、医学生や若手医師におけるマインドフルネスの長期的な効果について言及することはできない。

エビデンスの確実性は全体的に「低い」または「非常に低い」と評価した。

次に何をするべきか?

レビューの結果、強い肯定的な結果は得られなかったが、マインドフルネスとストレス状態に関するいくつかの結果は、マインドフルネスに関するさらなる研究が必要であることを示唆している。今後の研究は、厳密に計画されるべきで、理想的には、マインドフルネスの長期的な影響の評価を含めるべきである。

訳注: 

《実施組織》 堺琴美、瀬戸屋希 翻訳[2021.12.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013740.pub2》

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