早期の緩和的介入による原発性脳腫瘍患者とその介護者の転帰の改善


なぜこの疑問が重要なのか?

脳腫瘍は、人々やその介護者に大きな影響を与える。脳腫瘍は、身体的、神経認知的、社会的機能を低下させ、家族全員、特に十分な支援を受けていないインフォーマルな介護者に影響を与える可能性がある。他のがんにおいて、病気の初期段階で緩和の支援を受けることで、患者とその介護者のQOL(生活の質)が向上するというエビデンスがある。しかし、脳腫瘍の人を対象には、検証されていない。

目的

原発性脳腫瘍と診断された成人とその介護者の転帰を改善するために、通常のケアと比較して、緩和ケア専門サービスへの紹介を含む早期緩和ケアの介入効果を検証した研究を評価した。

エビデンスの検索方法

出版済みおよび現在進行中のさまざまな種類の医学試験を含む電子医学文献データベースを使用して、該当する研究を検索した。主要な論文の参考文献リストから、この分野の研究における主要な著者を探した。原発性脳腫瘍のある成人と、親族などのインフォーマルな介護者を本レビューの対象とした。

わかったこと

緩和ケア専門チームが患者や介護者の転帰に与える影響を検証した試験は見つからなかった。約半数が高悪性度腫瘍を有する患者集団において、認知という単一の症状に焦点を当てた1件の試験を特定した。この試験では、患者を、構造化された認知リハビリテーションの介入を受ける群と、薬物療法や理学療法などの通常のリハビリテーションケアを受ける群に無作為に割り付けた。認知機能のリハビリテーションは、1回45分、週4回、4週間にわたり、監視下でコンピューターを使ったエクササイズを行なった。認知リハビリテーションの介入を受けた群では、視覚性注意と言語性記憶に若干の改善が見られた以外は、両群間に重要な差はなかった。しかし、エビデンスの確実性は非常に低いと評価した。この研究や他の研究において、緩和ケアの他の側面に関するエビデンスを見つけることはできなかった。

これは何を意味するのか

原発性脳腫瘍患者とその介護者を支援する早期の緩和ケア介入については、十分な研究が行われていない。がん疾患全体における緩和ケアの提供に共通のアプローチと、この集団における緩和の特定の側面に焦点を当てた介入を検討する研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》 堺琴美、阪野正大 翻訳[2022.01.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013440.pub2》

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