機能性ディスペプシアに対する中薬(中医学の薬草療法)以外の薬草療法の効果は?

主要な結果

機能性ディスペプシア患者の症状とウェルビーイング(well-being)の改善に有用な複数の薬草療法を同定した。また、偽治療と比較して、重要な望ましくない事象を伴わないかもしれない。しかしながら、薬草療法と他の治療法の有用性を比較した科学的根拠(エビデンス)はほとんどなかった。

薬草療法の有用性は、機能性ディスペプシアに対する一般的な内科的治療と比較して、相対的な有用性を評価する必要があるかもしれない。機能性ディスペプシアについては、特に一般的な消化器合併症がある人を対象とした、より質の高い試験が必要である。

背景

機能性ディスペプシアとは?

機能性ディスペプシアは成人において頻繁にみられる健康問題である。胃の痛みや不快感を特徴とする。しかしながら、器質性ディスペプシアとは異なり、これらの症状は胃や腸の潰瘍やその他の病変が原因とはいえない。

機能性ディスペプシアの治療法とは?

この疾患の治療法には薬物療法と非薬物療法があるが、それらにどの程度有用性があるかは不明である。さまざまな薬草(ハーブ)製品が、この症状の治療薬となる可能性があるとしてある程度まで研究が行われている。

わかったこと

本レビューでは、このテーマに関するすべての利用可能な研究を検証し、これらの薬草のどれかが症状やウェルビーイングを改善できるかどうか、また安全かどうかを明らかにすることを目的とした。

研究の特性

実施したこと

機能性ディスペプシア患者を対象に、中薬以外の薬草療法を通常の治療法や他の治療法と比較した研究を検索した。症状、ウェルビーイング、望ましくない作用に関する結果を比較・要約し、研究方法や研究参加者数に応じて、エビデンスの信頼性を評価した。

要約結果

わかったこと

機能性ディスペプシア患者4,477例を対象に、27種類の薬草(ハーブ)製品を評価した41件の研究が同定された。そのほとんどは、薬草(ハーブ)製品をプラセボ(偽薬)と比較したものであったが、中にはオメプラゾールや ピロリ菌 治療薬、その他の治療薬と比較した研究もあった。研究期間は15日から12週間と幅があった。研究は世界各国で実施され、そのうち12件はイランで実施された。研究のうち14件は製薬業界から、8件は政府機関から、1件は医師会から資金提供を受けており、残りは資金提供元を明記していなかった。

主要な結果

STW5(成分の薬草の1種が イベリス・アマラL であることから、商品名イベロガストとして知られている)は、1~2カ月でプラセボと比較して、消化不良の全体的な症状を軽減する可能性がある。SWT5がプラセボよりもウェルビーイングを改善する効果が高いとは言えないかもしれないが、これを測定した研究は1件だけであった。安全性に関しては、望ましくない作用はプラセボと比較して同程度かもしれない。

ペパーミントとキャラウェイオイルは、1カ月の時点で疑似治療と比較しておそらく中程度から大幅に、消化不良の全体的な症状を軽減し、ウェルビーイングを改善する。 (補足:日本では、ペパーミントのエッセンシャルオイルの経口摂取は認められていません)しかしながら、このペパーミントとキャラウェイオイルとプラセボとでは、望ましくない作用の発生率にほとんどまたは全く差がないかもしれない。

ウコン は、4週間の時点でプラセボと比較して、おそらく消化不良の全体的な症状を軽減し、ウェルビーイングを改善する。このウコンとプラセボとでは、望ましくない作用の発生率におそらくほとんどまたは全く差はない。

以下の薬草療法について、プラセボと比較して消化不良の症状を改善するかもしれないというエビデンスが得られた。 ラフォネシア・パカリ(Lafonesia pacari)、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa)、 アーティチョーク(Artichoke) 、ボエセンベルギア・ロタンダ(Boensenbergia rotunda)、マスティクス(Pistacia lenticus)、 エンテロプラント(Enteroplant) 、アサフェティダ(Ferula asafoetida)、 生姜とアーティチョーク 、カンゾウ根、 OLNP- 06、赤唐辛子 、ハリグワ、 jollab、および アニスペニーロイヤルミント(Mentha pulegium) とシナモン(cinnamon)オイルは、プラセボと比較してほとんどまたは全く差がないかもしれない。さらに、 ナガバハッカ(Mentha longifolia) は消化不良の症状を増悪させるかもしれない。ほとんどすべての研究で、望ましくない作用の発生率においてプラセボと比較してほとんどまたは全く差がないことが報告されているが、赤唐辛子だけは望ましくない作用のリスクがプラセボと比較して高くなるかもしれない。ほとんどの研究では、参加者のウェルビーイングについては報告されていない。

他の薬と比較した場合、エッセンシャルオイル(精油)の組み合わせは、オメプラゾールと比べて症状の緩和効果で優れているかもしれないことのみが明らかとなった。

エビデンスの確実性

エビデンスの限界は?

各薬草療法の臨床試験が少なく、各対照群の参加者が少なく、直接比較したものが少ないため、エビデンスの信頼性は低い。加えて、ほとんどの研究はそのデザインに限界があった。その上、多くの研究では機能性ディスペプシアをどのように診断したか明記されていなかった。

本エビデンスの更新状況

本エビデンスは2022年12月22日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2023. 10.31] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD013323.pub2】

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