未治療の進行非小細胞肺がん患者に対する免疫療法薬と化学療法の比較

レビューの論点

非小細胞肺がん(肺がんの亜型)と診断された人で、これまでに治療を受けたことがなく、根治的治療に適さない人に対して、免疫療法は化学療法よりも効果が高く、毒性が低いのか。

背景

肺がんはがんによる死亡原因の第一位であり、全肺がん症例の85%以上を非小細胞肺がんが占めている。病期が進行していると根治的な手術や放射線療法は治療選択肢とはならず、最近まで化学療法が提示されていた。2016年以来、免疫療法薬(がん細胞に対抗する免疫系を刺激することができる抗体)には進行期の患者に延命効果があることが示されてきた。

免疫療法薬の主な副作用は、さまざまな臓器に対して免疫系が活性化することによって生じる組織の炎症である一方、化学療法は通常、白血球や赤血球の減少、脱毛、悪心(吐き気)や嘔吐を引き起こす。

このコクランレビューでは、根治の可能性がある治療に適さない非小細胞肺がん患者に対して、免疫療法薬(単剤あるいは2剤以上の組合せ)が標準的な化学療法と比べてどの程度有効で安全であるかを明らかにしようとした。

研究の特性

2020年12月31日までの主要なデータベースと学会記録を検索した。未治療の非小細胞肺がん患者を対象に、免疫療法薬(免疫チェックポイントと呼ばれる特定のタンパク質に結合する抗体)と化学療法を比較した7件の試験(参加者計5,893人)について検討した。

主な結果

PD-L1(腫瘍細胞あるいは免疫細胞が産生し、免疫チェックポイント阻害薬が結合するタンパク質)の発現率に応じて結果を報告した。

PD-L1タンパク質が腫瘍細胞/免疫細胞の50%以上に発現している人では、免疫療法薬の単剤によって生存期間が改善し、その副作用は比較的少ない可能性がある。さらに、免疫療法薬の2剤併用では、PD-L1タンパク質が高発現している人で生存期間が改善される可能性がある。毒性の発現率は、免疫療法薬の2剤併用と化学療法とでおそらく同等である。

エビデンスの確実性

全体として、エビデンスの確実性は中等度から低いものであった。

結論

進行した非小細胞肺がんでもPD-L1タンパク質の発現率が高い人では、化学療法と比べて、免疫療法薬の単剤使用あるいは2剤併用により生存期間が延長した。副作用の発現頻度については、免疫療法薬単剤のほうが化学療法よりおそらく低い。免疫療法薬の2剤併用では、副作用発現率は化学療法とおそらく変わらない。


訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)伊藤 彰 翻訳、稲尾 崇(神鋼記念病院呼吸器内科)監訳 [2021.05.11] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD013257.pub3》

Tools
Information