軍人や第一線の救急隊員が実際の配備前に行うレジリエンス構築プログラムは、どのような効果があるか

軍人や第一線の救急隊員は、トラウマになりそうな出来事を目撃すると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やその他のトラウマに関連した心理的困難に陥る危険性がある。このような出来事には、けがや死亡を目撃したり、隊員がけがや死亡の危険にさらされる状況を経験することが含まれる。理論的には、このような種類のイベントに直面する前に、これら隊員の心理的な回復力を高めることで、心的外傷後の苦痛の発生と重症度を軽減することができるかもしれない。本レビューでは、この種のレジリエンス構築プログラムのエビデンスを特定し、照合した。実験群と対照群を比較するデザイン(ランダム化比較試験(RCT)/クラスターRCT)を用いた研究のみをレビューの対象とした。6,774件以上の記録がスクリーニングされ、28件の研究がレビューの対象として選ばれた。このレビューの対象となったプログラムは、それぞれ異なる理論(「理論的方向性」)に基づいており、提供方法も異なっていた(例:オンライン/オフライン、グループベース/個人ベース)。このようなプログラムが、心理的ストレスの症状に対する回復力を高め、重大事件後のPTSDの診断を防ぐことができるという主張を裏付けるには、まだ十分なエビデンスがない。とはいえ、既存のエビデンスの基盤には限界がある。レジリエンスを高めるプログラムは、理論的な方向性、対象となる人々、実施方法、使用される設定、結果(評価項目)の測定方法(特定の結果に使用される尺度にはさらに多様性がある)など、非常に多様である。そのため、これらのプログラムがどれほど効果的であるかを結論づけることは困難である。今後の評価では、これらの限界を克服し、これらのプログラムが配備前の準備やトレーニングに役立つかどうかを判断できるようにする必要がある。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、屋島佳典 翻訳[2021.12.13]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013242.pub2》

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