体外受精治療における顆粒球コロニー刺激因子の使用

レビューの論点

体外受精(IVF)治療を受ける女性に対する、顆粒球刺激因子(G-CSF)投与の安全性と有用性の評価。

背景

子宮内膜(子宮の内側を覆う組織)が慢性的に薄い女性や複数回IVFに失敗している女性に対し、治療中にG-CSFを投与することでIVFのアウトカムが改善する可能性が示唆されている。G-CSFは骨髄を刺激し、特定の種類の白血球を産生する成長因子の一種である。子宮内膜では、G-CSFが細胞の再生を促進し、血流の増加を助ける。G-CSFは胚の着床(子宮内膜への接着)を助け、妊娠の継続を促進することでIVFの成功率を高めると考えられる。胚移植の時期に注射器で子宮内に注入する方法と、胚移植の後に皮下注射する方法がある。

研究の特徴

G-CSFをプラセボまたは無治療と比較した、1070例を含む13試験を特定した。9試験でIVF治療を受ける女性におけるG-CSFの役割を評価しており、そのうち多数の試験で2回以上治療に失敗した女性を対象としていた。他の4試験では、IVFを受ける、子宮内膜が薄い女性におけるG-CSFの役割を調査していた。エビデンスは2019年2月現在のものである。

主な結果

IVFを受ける女性に対するG-CSF投与がプラセボや無治療と比較して、妊娠の継続や臨床的妊娠率上昇や流産率低下を得られるかは不明であった。妊娠継続率が16%の典型的なクリニックに対しては、G-CSFを投与した場合妊娠継続率は14~50%の間になると予想される。多胎妊娠率を報告した試験はなかった。有害事象をアウトカムとして報告したのは4試験のみであり、G-CSF投与群とプラセボ・無治療群のいずれにも重大な有害事象は認められなかった。

エビデンスの質

G-CSF投与がIVF治療を受ける女性において、妊娠を継続させたり流産率を減少させたりするか否かは、非常に質の低いエビデンスに基づいて不明であった。エビデンスの質が下がった理由はバイアスのリスクによる。

訳注: 

《実施組織》内藤未帆、杉山伸子 翻訳 [2021.1.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013226.pub2》

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